2010年12月4日土曜日

『<スポーツする身体>とはなにか』──バスクへの問い・PART 1.──が出る。

 3年前の2007年に開催された第一回日本・バスク国際セミナーの日本側の研究者の発表草稿が単行本となった。それにしても予想以上の長い年月を要した。もう少し早く刊行すべであったが,諸般の事情でやむを得なかった,というべきだろう。いささか遅くなったとはいえ,それでも間違いなく一つの歴史的な足跡として重要な意味をもつ刊行になったとおもう。その意味では,忍耐強く,諦めないで頑張った編著者の竹谷和之さんにこころからの拍手を送りたい。
 すでに,来年の8月29日(月)から9月1日(木)までの4日間にわたって,第二回日本・バスク国際セミナーが開催されることになっている。その準備のために竹谷さんはおおわらわである。なにせ,こんどはバスク大学の研究者たちが大挙して日本にやってくる。その受け入れ態勢をどのように構築するか,いまから大変である。伝え聞くところによれば,神戸市外国語大学の特別プロジェクトの一つとして取り上げてくれることになり,大学を挙げての態勢づくりに取り組んでいるとか。それに加えて,神戸市がバックアップ体制をととのえてくれる手筈にもなっているとか。それに加えて,関連各位の支援をお願いすることまで,なにやかやと大変である。
 その意味で,今回のこの本の刊行は,ぎりぎりのところで間に合ったということでもある。これから,あちこち頭を下げて挨拶まわりをしながら後援・支援をお願いしなくてはならない。そのときに,この本を提示して,第一回日本・バスク国際セミナーの成果が,このような形になって結晶化している,と説明することができる。これはとても大事なことである。ことばだけで,日本・バスク国際セミナーについて,逐一,事細かに説明するのは容易ではない。しかし,このような具体的な本を提示しながら,そこから国際セミナーの細部に話を進めていくのは,比較的容易であるし,相手の理解も得やすい。そして,第二回目のセミナーの成果も,当然のことながら,このような単行本にする予定である,と説くことができる。
 今回のこの単行本は,日本側の研究者の発表草稿に手を加えて,出来上がったものである。したがって,バスク側のものはまだ未刊である。が,いずれ,翻訳をして刊行する計画も進んでいる,と聞く。こうして,日本とバスクの発表草稿が比較対照できるようになると,さらに,その価値が高まってくる。そういうことが軌道に乗ってくると,この日本・バスク国際セミナーはこんごも長く持続性をもっていくことができる。ぜひとも,そこをめざしていきたいものである。
 これまでにも,体育・スポーツに関する国際セミナーは,あちこちで開催されてきた。そして,いまも,いろいろの組織体をとおして開催されている。しかし,そのセミナーの成果が刊行物となることは比較的少ない。ましてや,一般の出版社をとおして刊行し,市販されるという例はほとんど聞いたことがない。大半は,セミナーをやりっ放しで終わる。その意味で,この本の刊行は意義深いものがある,とわたしは考えている。
 今回の本は,<スポーツする身体>とはなにか,という大きな問いを投げかけながら,サブ・タイトルとして「バスクへの問い・PART 1.」とうたっている。ということは,「PART 2 」「PART 3」と継続していくということを暗示している。こうした研究成果をこつこつと積み上げていき,それがあるまとまりをもったとき,驚くほどの大きな意味をもつことになろう。それまで息長く地道に頑張っていくことが不可欠だ。
 ちなみに,今回の執筆者は以下のとおり。
 編著者の竹谷和之さん(「水に溶ける」身体─ジャック・マイヨール)を筆頭に,三井悦子(個と関係性について─「わたし」であること,つながること),松本芳明(「ヨーガする身体」を考える─瞑想系身体技法における「身体」考),林郁子(フソトテニスをする身体),松井良明(賭けをする身体─日本の動物闘技と刑法を手がかりとして),船井廣則(遊び戯れる身体─東西における子どもの遊びの類似と相違),寒川恒夫(スポーツ人類学の現状と可能性),そして,わたし(<21世紀の身体>を考える─「近代的身体」からの離脱と移動)の計8名。一人ひとりが,それぞれ得意とするテーマをかかげて,力の籠もった論考を展開している。いずれも読みごたえがあって,読んでいて楽しい。詳しくは手にとってご覧いただきたい。
 この本は,叢文社の「スポーツ学選書・25」として刊行されたもので,この選書の第25番目の節目の刊行ともなっている。この「スポーツ学選書」も,当初は10冊をめざし,それを達成すると20冊をめざし,という具合につぎつぎにハードルを高くしてきた。そして,とうとう25冊目の達成である。こうなったら,30冊はおろか,さらにその上をめざして頑張っていきたいとおもう。もし,かりにこの選書が50冊を達成したら,それはこの世界にあっては快挙というべきであろう。その実現をめざして,これからも頑張っていこうとおもう。それは単に偉業の達成であるから,というだけではなく,この営みそのものが楽しいことでもあるから。
 みなさんのご支援をお願いする次第。
 とても,いい本ですので,どうぞご講読くださいますように。
 もし,必要なら,親しい執筆者宛てに注文してみてください。喜んで送ってくれるとおもいます。みんな,相当の部数を自己負担して購入していますので。

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