2011年1月1日土曜日

新年早々から年末の決意が反故に。徹夜で『のぼうの城』を読む。意志が弱いなぁ。

 みなさん,明けましておめでとうございます。
 本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 さてはて,新年早々,いきなり徹夜をしてまった。
 暮れに,高らかに宣言した「早起き鳥」の決意が,もう反故になってしまった。
 31日の朝,いつもより少しばかり早めに起きて,朝飯前の一仕事のまねごとができた。これでお膳立てはできた,と喜んだ。そして,31日の夜は早めに休んで元旦から早起きをして朝飯前の一仕事を軌道に乗せればいいと「取らぬ狸の皮算用」もきちんとできた。で,それを実行に移すべく,昨夜はいつもより少しばかり多めに泡盛を飲んで,そのまま眠るつもりだった。ことし最後の夜だし,テレビはないし,新聞・雑誌・ぴらつかこよみ(沖縄の情報誌)などをめくりながら,10年ものの古酒を飲んだ。これがまた格別においしい。かなり飲んで,いい酔心地になってきたので,よし,これで眠れると思い,書斎でことし最後の日記を書いていたら,なんだか快感を覚えるほどに眼がパッチリしてきた。こんなはずはない。すぐに眠くなるはずなのに・・・。
 時間も午後11時を過ぎている。では,なにか本でも読めば眠くなるだろう,と安易な気持ちで手をのばしたさきに『のぼうの城』があった。これが間違いのはじまりだった。
 おもしろすぎたのだ。もう,ずいぶん前から話題になっていて,本屋さんにも目だつところに平積みにしておいてある。だいたい,こういう仕掛けられたベストセラーには手を出さない,というのがわたしの流儀だ。必死で避けてきたのだが,年末にいろいろのメディアの企画する「ことしのおすすめ本」のなかに,かならずといっていいほどにこの『のぼうの城』があがってくる。そして,ついに,あるわたしの信頼している本読みのプロが,この本を「いちおし」の本だといって紹介している記事が眼に入る。では,いつか,気分転換するときにでも,と思って買っておいた。
 早く眠るための本としては,もっとも手を出してはいけない本であった。時代小説なのだが,仕掛けがいいし,テンポがいいし,登場するキャラクターがとても生き生きしている。しかも,現代社会にむけての強烈な「批評性」が読み取れる。筋書については,触れないでおこう。ただひとつだけ,この小説を読み終えたいまいえることは,「人間とはなにか」という根源的な問いである。わたしはそこにいたく響くものがあった。そして,感動した。ここではそれだけに留めおくことにする。あとで,もう少しだけ内容に触れるつもりにして。
 泡盛10年ものの古酒の底力とでもいうべきか。それとも,わたしの体調がすこぶるよかったというべきか。あるいは,長年の生活習慣のリズムが甦ってしまったというべきか。とにかく一向に眠くなってこないのである。かなり飲んだはずなのに・・・。
 まず,上巻。なんだ,秀吉の城攻めの話か,と思いながら読みはじめる。が,そうではなかった。それは単なる伏線であった。そして,いつのまにか,作者和田竜にはめられている。気がついたときは,すでに手遅れ。あっと言う間に半分を読んでいる。時間は午前1時少しすぎたところ。えーい,ままよ,あとちょっとで終わりだ,と考えて一気に最後まで読む。午前3時ちょい前。いつもなら,このあたりで眠りにつく。それがいつもの生活のリズムでもある。が,もう,下巻が読みたくていても立ってもいられない。こんな衝動にかられたのも久しぶりのことである。眼はますますランランと輝いてくる。頭もすっきり。ほろ酔い気分などとうのむかしに消えてしまっている。というわけで,とうとう,下巻を読み終えたのは午前6時。
 こんどは興奮してしまって,眠れない。なんということはない。でも,少しは眠っておかないとと思い,ふとんに横たわる。頭のなかは,「のぼう様」のことでいっぱい。この男はなにものか。なんともはやつかみどころのない不思議なキャラクターを,和田竜は創り出したものではある。その着眼といい,追い込み方といい,みごとという他はない。
 読んでいる途中から,はたと気づいたことは,作者の和田竜は,この作品をとおして『老子道徳経』の理想を描こうとしているな,ということだった。そして,読み終えたいまは,この気づきは間違いなかったと確信している。「のぼう様」は老子の精神を帯同した人物なのだ。だから,のらりくらりと捉えどころのないキャラクターになっている。老子のいう「無為自然」。これを地でいく。あの戦国時代に。かれは農民もふくめたわずか1000人足らずの兵で籠城し,2万を越す石田三成の大軍と対峙し,どうどうの闘いをしてみせる。しかも,初戦はみごとな勝ち戦である。その「のぼう様」のこころの奥底にあるものは,以下のとおりである。
 「二万の兵で押し寄せ,さんざに脅しをかけた挙句,和戦いずれかを問うなどと申す。・・・・・そんな者に降るのはいやじゃ。・・・・武ある者が武なき者を足蹴にし,才ある者が才なき者の鼻面をいいように引き回す。・・・・それが世の習いと申すなら,このわしは許さん」
 現代社会の縮図を,この戦国時代の城攻めをとおして再現してみせているかのようだ。どこぞの国,どこぞの企業,どこぞの大学,どこぞの町会,どこぞのクラブ,・・・・に,こんな実例はごろごろしている。わたしたちは,いま,こういう力関係のなかにどっぷりと浸かっていて,身動きできない状態にある。そこから抜け出すには死を決して闘うしか方法はない。その決断力がいま問われている。弱者には,その決断力が,欠けている。そうなると,あとは地獄が待っているだけだ。しかし,この「のぼう様」は間違いなく弱者に属しながら,最後の一線だけは「許さん」という矜持を保持している。ここがたまらないのだ。
 とまあ,こんな具合に,わたしのこころはくすぐられっぱなし・・・・。だから,最後まで読まないことには終われない。情けないが,とんでもない本に出会ってしまったものだ。でも,これこそが至福のとき。だからこそ,小説は止められない。

 以上,正月早々から懺悔のブログとなってしまった。
 ひょっとしたら,今夜は早く眠くなって,早く眠れるかもしれない。まかり間違っても,寝酒に泡盛の10年ものを飲んではいけない。これは「目覚め薬」だ。もちろん,これはわたしの場合にかぎる話であるが・・・・。
 さて,いつから「早起き鳥」となり,「朝飯前の一仕事」ができるようになるか,これがことしの最大の課題になりそうだ。いやはや・・・・。

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 では,ことしもよろしくお願いいたします。

 意志の弱いinamasaより,新年のご挨拶まで。

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