2011年7月8日金曜日

拝啓 江田五月どの。熱中症と節電とは別問題では?

あえて江田五月さんと呼ばせていただきます。
前参議院議長,現法務大臣兼環境大臣の江田五月議員を,わたくしごとき人間が「さん」づけで呼ぶのはたいへん失礼なこととは承知していますが,ここはあえて「さん」づけで呼ばせてください。なぜなら,たった2回とはいえ面識があってお話もさせていただいたことがあり,わたしなりに親しみを籠めてのつもりです。

最初は,能面アーティストの柏木裕美さんが銀座文藝春秋画廊で展覧会をされた折(2年前の2月)に,西谷修さん,今福龍太さん,そしてわたしの3人で「現代の能面を語る」という鼎談をしたときにご来席され,そのあとのパーティでお話をさせていただきました。二回目は,ことしの2月,やはり柏木さんが銀座文藝春秋画廊で展覧会をされたときに,偶然,会場でお会いし,お話をさせていただきました。「2年前の鼎談,覚えてますよ」と江田五月さんから言われ,政治家の記憶力に舌を巻いたものです。こういう人でないと政治家はつとまらないのだろうなぁ,と感心しました。

ですから,民主党の現政権にあって,もっともっと江田さんには活躍してほしい,と個人的には応援をしていたつもりです。やはり,面識のある人が活躍されるのは嬉しいものです。が,どちらかといえば「地味」な方ですので,あまり表立ってニュースになるようなことも少なく,堅実に職務をこなしていらっしゃるのだなぁ,と思っていました。

最初にお会いしたときに名刺交換をしましたので,そのあとから江田さんが発行していらっしゃる「メールマガジン」が送信されてくるようになりました。当時,参議院議長という人が,日常的にはどんな日々のスケジュールをこなしていらっしゃるのかがよくわかって,たいへんなお仕事をなさっていらっしゃるのだなぁ,と感心していました。いまも,法務大臣として,あるいは,環境大臣としての激務をこなしながら,メール・マガジンも発行されていらっしゃいます。その中に「ショート・コメント」というコラムがあって,ご本人が書いていらっしゃるとのことです。この「コラム」がわたしにはとても重要なところで,毎回,楽しみにしています。なぜなら,江田さんが日頃からなにを考え,政治に従事されていらっしゃるのかを知る,もっとも手っとり早い方法だからです。

ところが,7月7日(第1081号)の江田五月メールマガジンに掲載された「ショート・コメント」の文章をみて,びっくり仰天してしまいました。その冒頭につぎのようにあったからです。
「福島第一原発事故と原発稼働抑制により,全国的に節電が求められ,あおりで熱中症が多発している。」
この認識は,たぶん,ことば足らずになっているのだと思いますが,あまりにも誤解を招きやすい文章になっています。たしかに,エアコンをつけなかったために熱中症で亡くなられたお年寄りがいらっしゃったことは新聞の記事で知っています。が,この事例はきわめて特殊なもので,例年少なからずあることだとわたしは認識しています。

いま,多発している熱中症は,節電とは別のところでの問題です。屋外での,直射日光に照らされたり,あるいは,長時間の屋外での暑さに適応できなくなった人たちの症状です。つまり,節電と熱中症とは,ひとまず切り離して考えるべきことだ,というのがわたしの考えです。節電は節電,熱中症は熱中症として区別して考えるべきだ,と。そうしないと,とんでもない誤解が生じてしまう,と危惧するからです。

江田さんの書かれた文章を「深読み」しますと,ああ,江田さんは「原発推進派」なのだ,と読めてしまいます。もっと電力を潤沢に供給できれば,熱中症を防ぐことができる。だから,原発を止めてしまうのではなくて,「安全」を確保して(ここが問題なのですが),原発を稼働させるべきだ,ということになります。このことを,もし,意識的に書かれたとしたら,そのような意見表明をどこかできちんとなさった方がいいと思います。そして,その根拠も。もし,無意識で書かれたとしたら,これはやはり大きな誤解を招くことになりますので,大いに謹んでいただきたいと思います。江田五月さんのような「知性派」の政治家がおっしゃることだから,多くの人たちは「節電すると熱中症になる」と思い込んでしまいます。

わたしは,もともとエアコンなるものが体質的に好きではありませんので,相当に暑くても我慢しています。が,いよいよ,これ以上,我慢していては危ないと感じたときは,やはり,エアコンをつけます。そして,一時の涼をとります。そして,ある程度,からだのほとぼりが収まったら,また消しています。でも,こんなことは一夏に2,3回しかありません。あとは,団扇・扇子の大活躍です。これでなんとかやり過ごしています。大抵の人は,自分で判断して,これ以上は駄目だと思ったらエアコンは入れていると思います。それが「ふつう」の人のやることだと思います。

それを身の危険を犯してまで我慢するというのは,よほど特殊な考え方の人だと思います。背に腹は代えられないという俚諺のとおりだと思います。あるいは,エアコンを入れることすら判断できない特別な状況にあったのではないか,とわたしは考えています。それを「全国的に節電が求められ,あおりで熱中症が多発している」と書かれてしまうと,ちょっと困ります。企業のオフィスなどで「節電」につとめたあおりで熱中症が発症しているとは聞いていません。

江田さんのメールマガジンは,言ってしまえば,その中心になっている読者は支持者です。それだけに,ほとんど批判もなしに「鵜呑み」にする人も多かろうと思います。ならばこそ,十分にお気をつけていただきたい,というのがわたしの希望です。

余分なことかも知れませんが,最近の政治家の不用意な発言(だれとは言いませんが)は眼を覆いたくなるものが多すぎます。親子で「暴言」を吐いて,大騒ぎになったりしています。困ったものだと思っています。理性が狂気を帯びた時代ですので,なおさらのことです。原発こそそのシンボルになってしまいました。ですから,原発をめぐる言説をみると,その人の「理性」のレベルが明確に現れています。学者,評論家,作家という人たちの「理性」の狂い方が,原発をめぐる言説をとおして「露呈」してきていることは,よく知られているとおりです。

それだけに政治の舵取りはきわめて重要です。
国民が原発について,どのようにして欲しいかは,すでにいくつものアンケート調査をとおして明白です。その国民の意志を酌み取って,100年,200年さきを見据えた政治を実現してください。いまこそ,狂った「理性」を糺す絶好のチャンスだとわたしは考えています。ここで失敗したら,日本に未来はなくなってしまいます。

「知性派」の江田さんには「釈迦に説法」をするようなことになってしまいました。そのご無礼をお許しください。が,日本の未来がかかっていますので,あえて,ひとこと苦言を呈した次第です。どうぞ,よろしくお願いいたします。最近,氾濫している「ことば足らずでした」というような「弁明」はもう聞きたくありませんので・・・。

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