2011年10月1日土曜日

ムスタファ・サイッドさんのコンサートと西谷修さんとの対談を聞きに行く。

昨夜(30日),「フクシマ原発災害とエジプト革命をつなぐ」と題するコンサートと対談があった。こころ洗われるひとときであった。そして,つねにその「場所」に立つ,つまり,「触れる」(パルタージュ)ということがすべてのはじまりである,ということをいまさらのように感じた。とても重いテーマの籠もったコンサートであり,対談だったが,そのあとにはなんとも心地よい爽やかな風が吹いていた。いい時間を過ごすことができたと感謝。

場所は,江東区門前中町の「門仲天井ホール」。18時30分会場,19時開演。司会:山本薫(アラブ文学)。一部:Mustafa Said コンサート。二部:対談・西谷修。

少し早めに会場に到着。エレベーターを降りたところの受け付けの前で,西谷さんにバッタリ。元気そうな顔はしているものの,蓄積疲労のあとはありあり。「大丈夫?」と声をかけたら,「うん,なんとか」と口をにごす。そして,すぐに,近くにいた渡辺公三さんや仲野麻紀さん(サックス奏者)を紹介してくれる。ちょっとだけ雑談をして,すぐに座席へ。

のっぽビルの最上階(8階)にある,文字通りの「天井ホール」。小じんまりとした落ち着けるホール。三々五々,人が集まりはじめ,開始前に座席はおろか,床に座布団を敷いてもまだ足りず,最後は立ち見まで。たいへんな盛況。

さて,主人公のムスタファ・サイッドさん。
当日,いただいたパンフレットから抜粋してご紹介。

福島──ムスタファ・サイッド氏を迎えて──エジプト
      いま,ここで起こっていること

昨秋,International Oud Trio のメンバーとして来日したエジプトのウード奏者Mustafa Said氏が,今回の日本の災禍に心を傷め,連帯の意を表すべく自費来日します。彼はこの1月,現在住むレバノンからひとり,故国エジプトへ出向き,民衆の中で革命歌となる曲を演奏,BBCアラビア語放送を通じて世界へ放映されました。騒擾のさなか,銃弾を浴びて左手を負傷しました。目で見るのではなく,世界におこる出来事にその耳を澄まし,みずからの意思で距離を越えて,人びとの心の共鳴を奏でる彼のウードの音に,耳を傾けてみたいと思います。

Mustafa Said    ウード奏者,作曲家,アラブ音楽研究者
1983年エジプト・カイロ生まれ。両親がシナイ半島に滞在した際,劣化ウラン弾による爆撃に遭遇し,被曝。そのため,ムスタファは兄と同様,生まれながらにして盲目になる。2004年アラブウード学院終了。カイロ・オペラハウス,アゼルバイジャンでのスーフィーフェスティバル,中近東諸国,スイス,フランス,イギリスへ招聘される。11,12世紀の学者Omar Khayyam(ウマル・ハイヤム)の詩を歌った「roubaiyat el khayam」を発表するが,詩の内容がエジプトの政治体制への過激な批判とみなされ,政府から監視を受け,現在レバノン・アントニン大学にて教鞭をとる。2010年,International Oud Trio として来日公演。ヨーロッパ,インドネシア,日本の大学機関にてアラブ音楽の伝統的技法の講義を持つ。

ムスタファ・サイッドさんは,9月25日に来日。
9月28日(水)東聖山医王寺・五大院(福島市飯野町字町73),11時/13時。
9月29日(木)銘醸館(南相馬市原町区本町2-52),18時。
の二カ所で,「福島で奏でる──ムスタファ・サイッド氏による連帯ボランティアコンサート」を開催。そして,9月30日(昨夜)の東京公演とつづく。

西谷さんは,この間も,ムスタファさんと行動をともにし,レンタカーで被災地をまわっている。じつは,わたしも誘われていて,同行する約束をしていたのだが,へぼ用ができて断念。ほんとうに惜しいことをした。

ムスタファさんの演奏は,とても繊細で,遠いとおい世界に連れていってくれるような,心暖かいものだった。演奏しながらの歌は,まるで,コーランを聞いているような錯覚を起こす。けして声を張り上げることはなく,ちょっと抑え気味の,しかし,よくとどく声で,しんみりと歌う。まさに「祈り」の歌に聞こえた。こうした演奏をとおして,かれがなにゆえに日本にまでやってきたのかという意思は,わたしには十分につたわってきた。そうなのだ。かれは「祈る」ためにやってきたのだ。それも,宗教もイデオロギーも時間も超えて。わたしも,いつしか,祈っていた。

そのあとの対談が,またまた,みごとなものだった。西谷さんをして「わたしの役割だと思っていた世界のこと,グローバル経済のこと,戦争,革命,地震・津波・原発のことまで,全部,ムスタファさんが話してくれました」と言わせるものだった。ムスタファさんが「いても立ってもいられなくて」来日を,しかも,自費でくることを決意した,その気持ちも存分につたわってきた。それを,うまく引き出した西谷さんのトークもみごと。

帰り際に,CDを買おうと思ったら,わたしの前の人で「売り切れ」。その前にいた人は,名古屋からかけつけたMさん。にっこり笑って帰っていった。あとで聞かせてください。

0 件のコメント: