2011年10月2日日曜日

江東区に避難している原発被災者の人たちの間で分断が起きているというお話。

9月30日のムスタファ・サイッドさんのコンサートと西谷修さんとの対談のあと,旧知のNさんと一献傾けた。Nさんは学生時代に,西谷修さんと県人寮で一緒に生活した同級生。いまは,某高校(有名私学)の名物教師として名声を馳せている。大学では東洋史を専攻した人。そのNさんが,奥さんを呼び出して(江東区の区議会議員さんでもある),一緒に歓談した。とてもチャーミングな人で,社会的弱者の救済に力を入れて,議員活動に勤しんでいらっしゃる。

その議員さんから,江東区に避難した原発被災者の生活実態について教えてもらい,いささかショックを受けている。恥ずかしながら,わたしはその実態についてなにも知らなかったからだ。その話を紹介しておく。

江東区では,新しくできた大きな公団住宅を福島の原発被災者のために開放して,相当数の人びとを受け入れている。その原発被災者の間で,いま,新たな「分断」が起きている,というのである。その理由は,福島で住んでいた家と原発との距離によって,処遇の仕方が区分されているからだ,と。いわゆる,「警戒区域」「避難準備区域」「計画的避難区域」「緊急時避難準備区域」といったような,線引きによる処遇の区分である。これらの区分によって処遇の金額に相当の開きがあるために,こんどは被災者間で新たな軋轢が生まれている,というのだ。原発の事故によって住む家を追われたという点ではなんの違いもないはずなのに,それを距離によって区分することの意味がわからない。それはそのとおりで,だれもが納得のいくところ。その怒りが当初は政府に向かっていたのだが,いつしか,目の前にいる同じ被災者同士に向かうようになり,その両者の間で「分断」が起きている,というのである。

これは一種の二次災害ではないか。しかも,人災だ。

こうした実態を,なぜか,メディアは知っていても報道しない。西谷さんのいうところの,メディアによる「自発的隷従」というわけだ。そのために,わたしたちが知らないでいる,いわゆる「影」の部分のお話である。わたしたちはマス・メディアの思うままに操られている。しかも,そういうメディアの操作による虚構に騙された状態が日常化している。しかも,その上で,選挙行動での意思決定を強いられている。つまり,メディアの意のままになっている,という実態が一方にある。その結果が,こんにちの政治の腐敗を招いていることは明らかだ。

自民党から民主党に政権移動が行われたにもかかわらず,本質的には,日本の政治はなにも変わってはいない。こんなバカなことがあってはならないはずなのに・・・・。そして,駄目だ,駄目だといわれている民主党政権がいまもつづいている。しかも,その政権を国民の多数は容認したままでいる。口では「駄目」といいつつ,行動では優柔不断,これが多数の実態。こういうわたしたちの体質が,こんにちの日本の危機を招いている。このことを百も承知で,そこにメスを入れようとはしない。むしろ,擁護しようとする「力」が強く働いていることは,すでに,明るみにでているとおりである。政府もなにもしようとはしない。困ったものである。

「3・11」はそうした日本の社会がはらんできた諸矛盾をもののみごとに露呈することになった。冗談じゃない,と多くの人びとが憤っているのはまぎれもない事実だ。こういう状況からいかにして脱出するか。まさに,西谷さんがいうところの「離脱と移動」が,いまこそ必要なときだ。いま,という時期を逃したらもう二度とその機会はこないだろう。

Nさんの奥さんである議員さんからは,江東区に住む人びとの弱者の実態の,それもほんの一部にすぎないのだろうが,わたしにとっては衝撃的な話をいくつか聞くことができた。そのうちの一つを,とりあえず,ご紹介したにすぎない。話はまだまだある。いずれ機会をみて,また,書いてみたいと思う。

社会的弱者はいつの世でも「切り捨てられ」てきた。そこにメスを入れようというのが,Nさんの奥さんの議員としての矜持である。

このような議員さんが一人でも多くなることを願ってやまない。そうしないことには,日本の社会はいつまでたってもよくならない。かりに少数派であれ,間違っていることは間違っている,とはっきりものが言え,行動のできる議員さんを選出するのは,わたしたちの責任である。

こんなことを強く感じた夜でした。
また,「延命庵」にお招きして,お話を伺いたいと思っている。
いまからとても楽しみ。

〔追記〕
夜のお酒を飲みながらの話なので,ディテールについては,わたしが記憶違いをしている部分があるかも知れない。たぶん,話の大筋においては大丈夫だと思いますが,もし,誤りがありましたらわたしの責任です。どうぞ,ご寛容のほどを。



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匿名 さんのコメント...

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