2011年12月25日日曜日

『ボクシングの文化史』(東洋書林・監訳)を手にして感慨無量。

ことしもいよいよ暮れていく,このタイミングで首を長くして待っていた『ボクシングの文化史』(東洋書林・監訳)を手にすることができました。いま,とどいたばかりで,まずは,「監訳者あとがき」をチェック。トンチンカンなことを言ってないか,ここだけは気がかりでした。短い時間の制約のなかで急いで書いたものでしたので・・・。

前のブログにも書きましたが,予定では,12月15日に見本刷り,20日発売,ということでしたので,どの段階で完成品を手にすることができるかなぁ,と心配していました。といいますのは,19日には神戸に入って集中講義に備えていなくてはなりませんので,実際に受け取れるのはそれが終って帰宅してからになるからです。でも,できることなら,実物を持って神戸に乗り込みたいなぁ,という願望はありました。

ところが,20日の朝,訳者のひとり月嶋君に会ったら,もうすでに書店に並んでいます,すでに,1冊購入しました,という。「えっ!?」とわたし。「そんなはずはない」「いいえ,ほんとうです」という会話がありました。

で,実際に手にして眺めたのは23日の「ISC・21」12月神戸例会の席でした。主催者の竹谷さんが持ってきてくれました。そして,「情報交換」の時間帯に,この本を紹介してほしい,と。大急ぎであちこち眺めて,あとは,記憶を頼りに,この本のセールス・ポイントを紹介。

『ボクシングの文化史』,カシア・ボディ著,稲垣正浩監訳,松浪稔+月嶋紘之訳,東洋書林,2011年12月31日,第一刷発行,4,800円,本文570ページ,参考文献・索引など18ページ。

著者はカシア・ボディ。女性です。まずは,この点で,最初の驚きがありました。彼女は,ロンドン大学などの大学で,メディア論,文化論,現代英米文学論などの教鞭をとるかたわら,著述家として活躍。もちろん,大のボクシング・ファン。マニアックなほどのボクシングへののめり込み方が,この本を読んでいてもじかに伝わってきます。ボクシングに寄せる「愛」の深さは微笑ましいほどです。

いわゆるスポーツ史やスポーツ文化論を専攻する研究者とは違って,まずは,文学作品のなかに描かれてきたボクシングの記述を徹底的に洗い出し,そこに図像資料をクロスさせながら,古代ギリシアのむかしからこんにちまでのボクシングの変容を,懇切・丁寧に描き出しています。近代に入ってからは,絵画や彫刻にネットを拡げ,さらに,写真,ラジオ,テレビ,インターネットといったメディアがボクシングにいかなる影響を与えたかを,得意の「メディア論」「文化論」の手法で説き明かしていきます。みごとな手際のよさを遺憾なく発揮して,読者を魅了します。

わたしも,かなり早くから,スポーツ史研究に「文学作品」と「絵画資料」(彫刻も)を持ち込むことによって,新たなスポーツ史研究の可能性がひろがっていることを提示し,実際にいくつかの試みをしてきました(『図説スポーツ史』『図説世界スポーツ史』など,共著)。ですから,この著者のカシア・ボディの炯眼に,こころから同感し,共振・共鳴しながら,この本を読みました。

手にとっていただければ,すぐに,わかることですが,とにかく図像(写真もふくむ)がふんだんに取り込まれていて,それらを拾って眺めていくだけでも,存分に楽しむことができます。その上,カラーの綴じ込みページもあって,豪華そのものです。

巻末には,参考文献,参考映画,参考音源,ボクサー名索引,人名索引まで付してあります。この本を手がかりにして,もっと詳細なボクシング情報を得ようとする読者にとってはまことに便利な本になっています。ぜひ,手にとってご覧になられることをお薦めします。

最後に写真を掲載しておきますので,参考にしてください。


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