2012年3月21日水曜日

『ショック・ドクトリン』読解,西谷修さんを囲む会,充実の時間。

3月19日(月)に青山学院大学(河本洋子さんのお世話により)をお借りして開催された第58回「ISC・21」(21世紀スポーツ文化研究所)3月東京例会が,久しぶりに密度の濃い時間に満たされて,無事に終了しました。その主役はもちろん西谷修さんです。すでに,このブログでも予告してきましたように,ナオミ・クラインの『ショック・ドクトリン』読解をテーマに「西谷修さんを囲む会」を企画しましたところ,大勢の方が参集してくださり,大いに盛り上がりました。

ご多忙の西谷さんですので,いつものように「準備は不要です」「フリーハンドでお出でください」「その場の雰囲気でアドリブで」「その方が面白くなると思います」「コメンテーターを用意しますので,それに応答してくだされば」というような,ゆるいお願いをしました。ところが,今回は,西谷さんがなにか「ただならぬもの」を感じ取られたのかレジュメを用意して,お出でくださいました。

たしかに,わたしたちのこの研究会では,すでに2回にわたって『ショック・ドクトリン』読解の予習を積み上げてきました。なにせ大部の著作ですので,その内容をひととおり頭に叩き込むのは,そんなにたやすいことではありません。少しばかり時間をかけて,じっくりとナオミ・クラインの思考に接近することがが必要だと考えたからです。その上で,西谷さんをお迎えしよう,そうしないと,折角の西谷さんのお話を適格に受け止めることは困難だと判断したからです。

コメンテーターとしての最初の話の切り出しを三井悦子さんにお願いしました。三井さんは,西谷さんが『世界』(2011年10月号)に投じられた論考,「自由」の劇薬がもたらす破壊と荒廃──ナオミ・クライン『ショック・ドクトリン 惨事便乗型資本主義の正体を暴く』に寄せて,を手がかりにして何点かの問題提起をしてくださいました。それを受けて西谷さんのお話がはじまりました。

午後3時から6時まで,3時間に及ぶ長丁場を,じつに魅力的なお話をしてくださいました。話の立ち上がりは,三井さんのコメントを受けて,とてもわかりやすくナオミ・クラインの仕事とはどういうものであったのかというお話から入りました。こうして,ひととおり『ショック・ドクトリン』読解のためのウォーミング・アップを済ませた上で,西谷さんはさらに一歩踏み込んだお話をされました。

それは,『ショック・ドクトリン』読解のためのキーとなる概念を取り上げ,それらがどのようにして構築されてきたのかをじっくりと解き明かす気合の入ったものでした。そのキー概念とは以下のとおりです。
1.行動主義心理学(ショック療法)
2.経済的自由主義
3.キリスト教的世界観
4.経済的自由主義(2)
5.”自由”の創出と”解放・開放”の暴力
6.3・11後の日本

※つづく。時間切れのため,とりあえず,ここまで。

※4月2日の西谷さんのブログで,このときのことを以下のように書かれていますので,紹介しておきます。みごとな要約になっていて,大いに参考になると思います。

「ISC・21の研究会では,まず,アメリカの行動主義心理学と新自由主義的経済体制の適用にみられる人間観・社会観の共通性を説明し,ついで,市場の自己調整機能に信を置く自由主義経済の考え方と,西洋近代の「自由」の観念を準備したキリスト教的世界観(アウグスティヌスの「悪の弁神論」からカルヴァンの「救霊予定説」,アダム・スミスの「見えざる手」まで)との関係の概略を示し,さらに現在の新自由主義経済のグローバル化と,3・11以降の日本の復興についてのコメントをした。」

なお,この日のブログはいつもにも増して迫力満点の内容になっていますので,ぜひ,全体を通読されるようお薦めします。

以上,補足まで。4月3日追記。





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