2012年8月23日木曜日

「オリンピック・メダリスト銀座パレードに50万人」・考。

 オリンピックご苦労さん,といってメダリストたちを首相官邸に招いてドジョウ君が面談した,というニュースが流れた。人気低迷をつづけるドジョウ君にとっては,そこから抜け出すためのまたとないチャンス。首相がメダリストたちに面談するのは,これまでの前例どおり。ここでも,相変わらず「3・11」以前と同じことをくり返す政府官邸。しかも,想定外の長時間にわたったという。ドジョウ君は久しぶりにリラックスして,少年のように顔を輝かせたともいう。

 それから二日後の22日(水)には,毎週金曜日の首相官邸前で反原発を求めるデモを企画している首都圏反原発連合の代表者らと面談をした。それはひととおり代表者らの意見を聞いて,「貴重なご意見,参考にします。ありがとうございました」のたったの30分だったそうだ。メダリストたちの面談とくらべて,あまりにも短い,とデモの代表者たちは記者会見で憤った。しかも,話し合いもなにもない。ただ,聞き置いた,というだけの話。これはドジョウ君の人気とりのための単なるパフォーマンスでしかなかった。

 この落差(あるいは,差別)にドジョウ君の,現段階での政治姿勢の特質がみごとに露呈している,とわたしはみる。

 オリンピックのメダリストたちは,首相面談のあった20日(月)の午前11時から約20分,1キロの銀座パレードを行っている。そこに50万人もの人が集まってきたという。このニュースもまた大きく報道された。わたしは一瞬,ことばを失って呆然としてしまった。50万人という数の多さに。自分の好きな選手の姿を一目見たくてわざわざ銀座まで押しかけ,ほんの数秒間,目の前を通過していくメダリストたちに気持ちを集中させる,なんとも無邪気な人たちの多いことか,と。

 この人たちは,日本国が「非常事態」に陥っていて,いまもなおにっちもさっちもならない,手詰まりのまま苦悩している,という未曽有の厳しい現実は眼中にないのだろうか。自分たちの視野に入る小さな日常だけをみつめ,平和で安全な生活が保証されている,と信じて疑わないのだろうか。もちろん,政府を筆頭にした関係者たちも必死で,いま,わたしたちが引き受けざるをえない「非常事態」をひた隠しにしていることは衆知のとおりである。

 その筆頭のひとりがイシハラ君だ。しかも,考えていることの質(たち)が悪い。「巨人軍だって優勝パレードを銀座でやるではないか」のひとこえに,JOCは便乗した。ウィークデーの月曜日に銀座のど真ん中を交通止めにするには,かなり困難なハードルがあったらしい。でも,大きな声の人の言うことにはとても素直な人たちの一致団結によって,あっさりとメダリストたちの銀座パレードが決まったという。

 これは断るまでもなく2020年オリンピック東京招致のためのデモンストレーションだ。いや,デモンストレーションなどということばは美しすぎる。たんなる「デモ」だ。この「デモ」に動員された50万人のうちの圧倒的多数の人は,その「デモ」に利用されたということも意識していないだろう。ただ,ただ,目指すメダリストの姿が一目見たいという一心だから。

 ご承知のとおり,東京都のオリンピック招致運動はさっぱり盛り上がらない。来年の9月7日には最終決定がIOCでなされることになっているというのに。対抗馬のマドリードやイスタンブールでは,市民の支持率が70~80%にも達しているというのに,東京都の都民の支持率は50%にも達しない。だから,なにがなんでもオリンピックのメダリスト人気に便乗して,支持率を上げる必要がある。イシハラ君はそこに眼をつけた。

 しかし,イシハラ君のやっていることは矛盾だらけだ。本気でオリンピックを東京都に招致したいと考えているのであれば,センカクなどに手を出すべきではなかったはずだ。外交無能の政府は竹島だけでも手を焼いていたはずなのに,わざわざ,このタイミングでセンカクを買い取ろうというのだから。一番近い燐国と国土領有をめぐって,真っ向から対立するという事態が,ますます深刻化しつつある。そうなれば,韓国と中国の票は,間違いなく東京招致からは逃げていくだろう。

 のみならず,センカクは,沖縄の基地問題を固定化させる,というイシハラ君の深慮遠謀がその背後にちらついているようにみえる。だとしたら,イシハラ君は,またしても沖縄の人びとを裏切る行為にでていることになる。どこまで沖縄を蔑視すれば気がすむのだろうか。文学者としての人間洞察力はどこにいってしまったのだろうか。

 史上最多の38個(金7,銀14,銅17)というオリンピックの集約の仕方そのものに,じつは,大きな問題がある。だが,そのことはひとまずここでは措いておくとして,そのメダル数をふりかざして,わたしたちがいまもっとも根源的な問題として取り組まなくてはならない,フクシマという「非常事態」から人びとの眼を逸らせようという,この悪意に満ちた「暴力」こそが糾弾されるべきであろう。

 「オリンピック・メダリスト銀座パレード」については,まだまだ,取り上げなくてはいけないことが山ほどある。室伏問題もふくめて,本気で考えなくてはならないことが・・・・。

 とりあえず,今日のところはここまで。

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