2012年10月20日土曜日

茶番・日本に駐留する全米兵の夜間外出禁止令。

 沖縄の米兵による集団強姦事件に対する沖縄県副知事の強い抗議を受けて,在日アメリカ軍のアンジェレラ司令官は,「駐留米兵だけでなく出張者を含む米軍人全員の夜間外出を禁止する」指令を出したと,ほとんどのメディアが報道した。しかも,沖縄県だけではなく,日本に駐留するすべての米軍人を対象とする,これまでに前例のない厳しい措置だという。

 しかし,こんな茶番に騙されてはいけない。問題の核心にあるのは,沖縄で犯罪を犯した米兵を日本の法律で裁く権利を剥奪されている「日米地位協定」の存在だ。以前,沖縄国際大学のキャンパスにアメリカ軍のヘリコプターが墜落した事故のときには,沖縄の警察による現場検証すら排除され,ことの真相は米軍の提供する情報だけで終始した。これもまた「日米地位協定」によるものだと,そのとき知った。

 諸悪の根源はこの「日米地位協定」にあると認識すべきだ。そして,こんどの二人の米兵による集団強姦事件も,一応は沖縄県警による取り調べが行われているが,いずれ米軍が引き取り,アメリカ本国に送り返されて終わりである。つまり,米軍の保護のもとに置かれる。それどころか,米兵たちは沖縄での女性暴行事件は無罪放免になることを知っているらしい。だから,何回も同じことがくり返される。しかも,今回の事件を起こした二人は,沖縄に駐留する米軍に所属するのではなく,アメリカ本国の軍に所属する兵士で,「短期出張」で沖縄にやってきたという。なにを目的に「出張」してきたかは察しがつくというものだ。

 沖縄での婦女暴行事件は,もう,何回となくくり返されてきている。そして,そのたびに「夜間外出禁止令」を出してきた。それも「当分の間」だけのことだ。今回も同じ「当分の間」という条件つきだ。ということはいずれ解除になる。つまり,一時しのぎの茶番にすぎない。本質はなにも変わってはいない。沖縄県民はみんなわかっている。騙されるのはヤマトンチュだけのこと。

 メディアもアホだから,日本全土に駐留する米軍人のすべてに適用する前例のない厳しい措置だと強調する。夜間外出禁止令の内容がこれまた,ふざけている。夜間とは「午後11時から午前5時」までのことだそうな。こんな時間に外出する米軍人は,どこに,なにをしに出かけるというのか,聞いてみたい。この時間は,日本語では「深夜」という。だから,「夜間外出禁止令」という報道がまずは間違っている。「深夜外出禁止令」とすべきだ。そうすれば,この禁止令の茶番の実態が丸見えになる。

 日本語には「午前さま」ということばがある。ふつうの日本人は午後11時から遊びにでかける人はいない。ふつうの日本人は「午前さま」にはならないように帰宅を急ぐ。つまり,午後11時には帰宅すべく努力する。だから,午後11時から外出する日本人は,ごく特殊な,例外的な人たちしかいない。その目的もほぼ決まっている。

 ついでに述べておけば,アンジェレラ在日米軍司令官は記者会見で,はっきりと謝罪していたが,ルース駐日大使は謝罪のことばはひとことも発してはいない。「ことの重大さを深く理解している」という趣旨のことを述べたにすぎない。ここにも日米地位協定の一端がちらりと顔をのそがせている。

 日本はいつからアメリカの属州となったのか,という議論がある。アメリカの言いなりではないか,と。しかし,この言い方も間違いである。アメリカの州は,国家とは別に独自の州法をもっていて,その州の住民の利害を守ることができる。たとえば,銃をもつことを認めている州もある。あるいは,進化論を公教育で教えてはいけない州もある。沖縄の基地に関して,沖縄県民の利害を守ることのできる法律は認められていない。しかも,沖縄県民の意志や希望すら,「日本政府」によって踏みにじられてきたのが「復帰40年」の歴史だった。この現実,まったく気の遠くなるようなこの現実を,ヤマトンチュの多くは「見て見ぬふり」をしてきた。だから,日本は「アメリカの属州」という議論はまったく見当違いだ。ましてや,沖縄に関してはアメリカの植民地以下ではないか。

 だから,沖縄に駐留するアメリカ軍兵士たちも,まるで治外法権であるかのように振る舞う。ましてや,短期出張と称して沖縄にやってくる兵士たちの振る舞いは,「旅の恥はかき捨て」的な感覚ではないかと思う。

 またまた脱線していきそうなので,この辺りでこのブログは終わりにする。
 もう一度だけ言っておく。問題の核心は「日米地位協定」にある,と。最小限,日本で犯罪を犯した米兵は,日本の法律で裁く権利を,わたしたちは確保しなくてはならない,と。それなくして,問題の根源的な解決はありえない,と。そうではない措置は,すべては「茶番」である,と。

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