2012年10月24日水曜日

大相撲の「巡業ちゃんこ」が廃止されていた・・・とは。

 日馬富士が二場所全勝優勝を飾って,めでたく横綱となったのに,メディアは意外にも冷やか。それどころか日馬富士バッシングの記事さえ,大新聞の誌面に躍っていたことさえあります。担当記者の記名入り記事もありましたので,いずれ,具体的に「名指し」で批判を展開してみようと密かに計画中です。

 今日は,偶然にも予想外の時間が空いたので,かねて購入してあった『相撲』10月号(ベースボール・マガジン社刊)をめくって楽しんでいます。もちろん,日馬富士の特集といってもいい「秋場所決算号」です。この号を買わずして日馬富士ファンとは言えません。表紙の見出しも,大きな文字で「日馬富士 満願成就」とあり,やや小さく「2場所連続全勝優勝で平成8人目の横綱誕生へ」とあります。そして,表紙の写真は,いうまでもなく日馬富士が羽織袴でどっかと座り,大盃を前に,右手で大きな鯛を掲げ,後援者に囲まれてにっこり笑っているものです。この号は,久しぶりにわたしの宝物として「永久保存版」となりそうです。

 この雑誌の中に,連載漫画が載っています。「琴剣の相撲のす」第16回巡業ちゃんこ,と標題がついています。この漫画によりますと,「人員削減,経費削減のため,平成7年の春巡業から廃止になった」とあります。ところが,去年のある巡業地で,白鵬関が昼食時にどうしてもちゃんこが食べたい,と世話人の人たちに頼んでつくってもらって食べたことがあるそうです。それを見た親方衆が「やっぱり巡業はちゃんこ鍋が合うよなぁ」と絶賛していたそうです。そんなこともあってか,今年の春巡業中に,ちゃんこの炊き出しを2回行ってみたところ,力士たちの評判はすこぶるよかったとのことです。

 漫画の内容は,こんな話題を切り出しに,むかしの巡業ちゃんこの思い出をたどっています。むかしのお相撲さんの中には,巡業ちゃんこの美味しそうな話に誘われて,それが動機になって弟子入りした人もいるとか,ちゃんこの食材の買い出しから後片付けまでの苦労話,などが描かれています。

 巡業ちゃんこを廃止して,では,お相撲さんの昼食はどうしているのかと思ったら,仕出しのお弁当が配給されているというのです。巡業先といえば屋外での食事です。青空のもとで仕出し弁当を食べているお相撲さんは絵になりません。むかしの巡業ちゃんこは,「その土地のうまいもの,刺身,酢の物,焼き肉,フライ,サラダなど,和洋中と品数にして10種類以上という豪華版!!別名・青空レストランと呼ばれるほど楽しみな食事でした」ということです。

 「人員削減,経費削減」が理由,と漫画には書いてありましたが,そうだろうか,とわたしなどは首を傾げてしまいます。なぜなら,人員削減・・・・ちゃんこ鍋は新弟子さんたちの仕事だったはず。新弟子が集まらなくて人手が足りない,ならわかります。ならば,兄弟子たちも手伝えばいいはずです。経費削減・・・・これも納得いきません。仕出し弁当といったって,お相撲さんの食べる弁当はふつうのサイズではないはずです。だとしたら,相当に高価なものになるはずです。たぶん,単純に経費を計算したら,ちゃんこの方が安上がりのはずです。しかも栄養満点です。

 そこには,漫画でも描けない内緒の事情があるのではないか,とわたしは想像しています。その事情とは,丁寧に説明しないと誤解を招く恐れがありますので,ここでは残念ながら割愛させていただきます。でも,あえて抽象的に書いておけば,以下のようではないか,とわたしは推測しています。

 つまり,日本相撲協会が,大相撲文化というものをどのように考えているのか,そのうちのなにを継承し,なにを改善していくべきと考えているのか,という基本的な理念を欠いている,ということです。巡業ちゃんこは,大相撲文化を支える重要な柱のひとつだ,とわたしは考えています。しかし,その巡業ちゃんこを継承するだけの力がなくなっている,そこに大きな問題点が象徴的に表出しているのではないでしょうか。

 たかが「巡業ちゃんこ」の存廃ぐらいで・・・と言われるかも知れませんが,わたしはすこぶる重要な問題がそこには隠されていると考えています。大相撲という伝統文化が,グローバル化という大きな波に洗われているうちに,伝統文化としての重要なエキス(旨味)がどんどん削ぎ落とされていく,そのあとには形骸化した形式(骨)だけが残る,その典型的な姿をみる思いがします。

 今日のところは,総論程度にして,各論については,これから折をみて展開してみたいと思います。本気で考えてみたいと思っています。

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