2012年12月5日水曜日

「尾てい骨を巻き込む」とはどういうことか(李自力老師語録・その25.)

  李自力老師のイエマフェンゾンのときの脚の運び方をじっとみていると,大臀筋がもこもことダイナミックに動いているのがわかる。あわてて,自分の臀部をさわりながらイエマフェンゾンの脚の運びのところをやってみる。大臀筋は動くどころか,硬くもなっていなくて柔らかいままだ。なにかが足りないのだ。以前,教えてもらった「尾てい骨を巻き込むように」はこころがけてはいるのだが,いまひとつピンとこない。気持ちとしては,こんな風かなぁ,と思いながらそれらしきことを試みてはいる。ときおり,たぶんこれでいいのだろうなぁ,という感触はつかめたつもりでいた。しかし,そんなものは,まったくの紛い物であったことが,今日(6日)の稽古でわかった。

 尾てい骨を巻き込むようにして脚を前に運ぶとはどういうことなのか,今日は徹底的に教えてくださった。なるほど,とこころの底から納得。

 李老師,曰く。まずは,肛門を締めなさい,と。何回も何回も肛門を締める練習をしなさい,と。そして,肛門をさらに強く締め上げると,男性でいえば前立腺の部分も連動して,かなり広い部分がぐっと締まる感じがつかめるようになる。手を当てがって確認してみると,大臀筋もふくめて肛門から前立腺のあたりの筋肉が,一斉に収縮していくのがわかる。

 そこで,早速,足の運びに応用してみる。すると,たとえば,右足に体重移動して右足を軸足にして片足で立ち,左足を右足のうしろに引きつけながら,これらの筋肉を締め上げる。つまり,大臀筋・肛門・前立腺の筋肉を締め上げる。すると,「尾てい骨を巻き込む」ということがおのずから起こる。

 すると,どうだ。引きつけた左足が前に送り出されていくではないか。左足を前に出すのではなく,「押し出され」ていく。その押し出された左足は,右足の重心の深さに応じて,前に伸びていく。そして,足が伸びきったところで自然に踵が床につく。それが,その人の歩幅となる。つまり,重心の低い人は遠くまで足が送り出されていく。重心の高い人は歩幅が狭くなる。これを「成正比」という,と教えてくださった。

 同時に,前に送り出された足は,猫の足のように音を立てないようにそっと床に置く。これを「マン(万としんにゅうがひとつになった漢字)歩如猫行」という,と教えてくださった。なるほど,李老師の足の運びが,とても静かで柔らかで,それでいて力強いのは,こういう仕掛けになっているのだ,ということがよくわかった。

 こうなったら,あとは稽古あるのみ。ただし,これらの筋肉群を締め上げるには,軸足がしっかりと安定していなくてはならない。頭のてっぺんの百会から尾てい骨をとおって,途中をとばして,踵まで一本の安定した軸を確保することが前提となる。この一本の軸がきちんとできていれば,腰の回転もおのずからスムーズにできるようになる,と李老師。つまり,股関節をゆるめることも,滑らかにできるようになる,と。

 以下は余談であるが,とても面白い話として李老師がしてくださったので,書いておこう。
 むかしは,この「尾てい骨を巻き込む」ためのコツを教えるときには,先生が,尾てい骨から肛門,前立腺にかけて直接手で触って確認しながら稽古をした。女性にも同じようにして教えていた。しかし,いつからかセクハラの問題が起きて,いまでは直接手で触れるということはしなくなった。もちろん,男性に対しても,触れることはしない,と。

 さて,こういう変化をどのように考えるか,これはまた別の問題ではあるが,少し考えなくてはならない重要な問題が隠されているように思う。いつかまた,文化論的な立場から検討してみたいと思う。

 今日のところは,ここまで。

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