2013年2月13日水曜日

「ユエンタンカイクア」ということについて(李自力老師語録・その27.)

 降雪が心配された今日(13日)の太極拳の稽古でしたが,朝方には止んで,快晴の青空が広がりました。その上に李自力老師が久しぶりに指導にきてくださいました。みんなの緊張感が高まります。李老師の鋭いまなざしのもとで,わたしたちもふるえながらも集中して,レベルの高い稽古ができました。

 今日の李老師の教えのひとつは「ユエンタンカイクア」(yuan dang kai kua)というものでした。わたしのパソコンの漢字ソフトがレベルが低いために漢字表記ができません。したがって,いささかややこしい話になってしまいますが,ことばで説明します。

 ユエンは円という漢字の古い書体,タンは衣偏に当の旧漢字,カイは開,クアはにくづき偏に誇という字の右側(旁)を組み合わせた文字。

 つぎはその意味について。ユエンタンは「ズボンの股の内側のまち」,カイクアは「腰の両側と股との間の部分」。つまり,どちらのことばも同じことを意味しています。つまり,同語反復(トートロジー)です。しかし,厳密にいうと微妙に意味が違います。でも,ここは同語ということにしておきます。そして,このあたり全体を表現している,と理解することにしましょう。

 さて,ここからが肝腎なところです。このユエンタンカイクアにボールをはさんで,股関節をゆるめながら,そのボールをベアリングのようにして腰を回転させなさい,と。この腰の回転の仕方を,イエマフントゥンのゴンブ(弓歩)のあとの体重移動,すなわち,体重を前足加重から後ろ足加重に移しながら腰を回転させる,このときに行いなさい,と。このときの腰の運動は単なる回転ではなくて,回転に体重移動がともなうので,腰全体はゆるやかな「円運動」になります,とおっしゃる。そして,その動きを,少しオーバーにするとこうなります,と言って李老師が実際に垂範してくださいます。それはそれはみごとなゆるやかで,粘り強い円運動になっていました。

 そして,さらに重要な指摘をしてくださいました。それは,腰の回転の軸足となる後ろ足を,やや外側に開きなさい,と。同時に,前足もやや外側に開きなさい,と。つまり,がに股の姿勢を経過させなさい,と。すると,腰の回転と体重移動がじつに滑らかになり,腰全体がゆるやかな円運動になり,しかも,粘り強さがでてきます。その上,膝の負担もなくなります,と。

 太極拳をやって膝を痛める人が多いのは,この運動を理解し,マスターできていないからです,と。指導者の中にも,このことがわかっていない人は少なくありません,とも。ですから,このユエンタンカイクアを徹底的に稽古して,ただ頭で理解するだけでなく,からだにしみ込ませなさい,と。そうすれば,膝を痛めることはありません,とも。

 この稽古をとおして気づいたことは,これまでの股関節をゆるめるということの理解が浅かった,ということでした。言ってしまえば,円運動ではなくて,直線的で角張った運動で処理していた,という次第です。じつは,このことはうっすらと気づいていました。李老師の動きが,わたしたちのそれとは似て非なるものだ,と。しかし,どこが,どのように違うのか,必死で観察するのですが,理解不能でした。しかし,今日の稽古で,なるほど,と合点。

 早速,事務所にきておさらいをやってみました。すると,股関節をゆるめて「滑らせる」イメージが,これまでとまったく違うことがわかってきました。そして,ユエンタンカイクアの部分にボールをはさんだ感覚で,その部分全体をベアリングのようにして,滑らせながら体重移動とともに腰を回すと,ゆるやかで粘り強い腰全体の円運動が生まれる,ということも頭では理解することができました。あとは,この感覚をからだにしみ込ませるまで稽古をすること。

 なんとなく,手のとどきそうなところに新たな光明をみた思いがします。これまで,わけもわからないまま,見よう見まねで稽古してきた段階から一歩,前に踏み出せた,そういう充足感が湧いてきました。李老師のお蔭です。

 太極拳は奥が深い,としみじみ思います。何年かけても「24式」を卒業することはないでしょう。気の遠くなるような話ですが,だからこそ,面白いのだと思います。この面白さが感じられる間は,太極拳から離れることはないと思います。いや,それどころか,いまの生活のリズムのなかでは欠かすことのできない至福の時もあります。大事にしなくては・・・とみずからに言い聞かせています。李老師,Nさん,Kさん,Sさん,ありがとうございます。こころから感謝しています。

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