2013年2月14日木曜日

レスリングを中核競技から除外。IOC理事会,暴走す。

 貢ぎ物が足りない。少々,お灸をすえておこうか。あわてて,どれだけの貢ぎ物を送り届けてくるか,様子をみてやろうか。それによって,これからのことも考えようか。そんな「影」の声がリアルに聞こえてくる。

 IOC理事会が中核競技からレスリングを排除するという決定を知り,唖然としてしまった。そして,そのつぎの瞬間,「ああ,オリンピック・ムーブメントのミッションもとうとう終わったなぁ」という感慨がわたしの脳裏をよぎった。いよいよもって葬送行進曲のはじまりだ。

 これから,いわゆるスポーツ評論家諸氏の出番で,いろいろの議論が闘わされることになるのだろう。しかし,どこまでオリンピック・ムーブメントの本質に迫る議論が持ちあがることになるのか,お手並み拝見というところ。もちろん,ほとんど期待はしていないが・・・。

 そこで,現段階でのわたしの感想を述べておけば,以下のとおり。

 オリンピック競技の中核競技からレスリングを排除するというシナリオを,どこの国のだれが,なにゆえに,用意したのだろうか。要するに仕掛け人はだれだったのか。そして,その意図はなんだったのか,ということだ。

 いま,伝えられている情報によれば,IOC理事15人の投票によって決めたという。それも3回,投票をくり返して,徐々に対象をしぼり,最後に3競技種目のなかからレスリングが選ばれたという。しかも,最初の投票のときからずっととおして,レスリングはワースト・ナンバー1だったという。この一点からして,あからさまな仕掛けがあった,ということがわかる。

 レスリング排除の理由は,ロンドン大会のときの入場者数,チケットの販売数,競技人口,競技運営コスト,男女比のバランス(レスリングは男子14種目,女子は4種目),放映権料,などが勘案されたのだろう,と言われている(現段階で推測されているかぎりでは)。ここにちらつくのは,経済的合理主義の考え方である。オリンピック・ムーブメントの精神や,オリンピックの理想,などというものは,どこかにかき消えてしまっている。のみならず,レスリングが,ほんとうに他の競技種目に比べてワーストだと判断できる根拠があったとも思えない。だから,なにゆえにレスリングが?という疑問は払拭できない。

 さらに驚くべきことに,レスリング関係者が異口同音に吐いたことばは,「ロビー活動が足りなかった」「不用意だった」というものであった。ということは,危ないと予想されていた競技団体は,そうとうに周到な「ロビー活動」が行われてきた,ということだ。わけても,接戦を制した韓国のテコンドー関係者の「ロビー活動の成果だ」と大見得を切った発言が印象に残る。なるほど,と。

 というのも,テコンドーがソウル・オリンピックで正式競技種目に決定したとき,相当のカネが動いたという情報が流れたことを記憶しているからだ。当時,わたしは日本のテコンドー関係者との接点があり,かなり詳しい情報もえていた。そして,オリンピックの開催国とはいえ,新しい競技種目を正式競技種目に加えるには,相当の政治とカネの力が不可欠なのだと知った。

 こういう裏情報のようなことを言い出すと際限がなくなるので,やめにしておく。大切なことは,いろいろの「力学」が働くとしても,最終的決定権はIOC理事会にある,ということだ。つまり,ひとえにIOC理事の見識にかかっているということだ。

 そこで,今回の決定をくだしたIOC理事のメンバーを確認してみて驚いたことがいくつかあった。
 ひとつは,15人の理事のなかに,ギリシア,フランス,アメリカ,ロシア,イタリア,などという主要国からの理事は一人もいない,ということだ。アジアでいえば,中国,日本,韓国からの理事もいない。まことに不思議なメンバー構成になっていることだ。
 もう一つは,競技経験のない理事が二人もいるという事実だ。そのうちの一人は,なんと,前会長のサラマンチの「ジュニア」だ。競技歴もない,ただ親の七光だけでIOC理事に選出されているというこの事実は不可解である。

 以前から,IOC理事になるには,強い「ボス」を中心とした「仲良しクラブ」の一員になることが先決だと言われていた。はっきり言っておけば,前会長サラマンチを中心とした「仲良しクラブ」だ。この連中がIOC理事会の主導権を握っているということだ。だから,アメリカもフランスもロシアも中国も,対等にものを言う国の代表は排除されてしまう。

 ちなみに,IOC理事会メンバーの国籍と競技歴とを列挙しておくと以下のとおり。
 ベルギー(セーリング),シンガポール(セーリング),ドイツ(フェンシング),モロッコ(陸上),英国(バドミントン),オーストラリア(ボート),南アフリカ(水泳),スェーデン(なし),スペイン(なし),ウクライナ(陸上),グアテマラ(野球),台湾(バスケットボール),スイス(アイスホッケー),アイルランド(柔道),ドイツ(フェンシング)。

 この一覧を眺めているだけで,思い当たることはたくさんある。
 が,これ以上のことは,ここでは控えておこう。
 あとは,読者のみなさんの想像力におまかせしよう。

 3月4日にはIOCの評価委員会のメンバーが大挙して日本に視察にやってくる。東京都はすでにその応対のためのリハーサルに入って,本番に備えているという。さて,このときの「ロビー活動」の戦略と手土産やいかに・・・・。オリンピック招致はそれ次第。以前には,それで失敗している。こんどはそのリベンジだという。いやはや,とんだ珍道中が展開されることになりそうだ。とりわけ,報道の姿勢には注目していたい。

 IOC理事会に,もはや,的確な思考力も判断力もない,とわたしは考えている。
 おまけに,アメリカもロシアも中国も,かつてのようなオリンピックに寄せる情熱は消え失せてしまっている。もはや,どうでもいいのである。そういう国がこれから増えていくことだろう。

 その意味で,オリンピック・ムーブメントのミッションは終わった,と言っておこう。
 その理由についても,このブログでもおいおい書いていこうと思う。

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