2013年2月16日土曜日

フランスの柔道指導者の国家資格免許について。最新情報。

太極拳仲間の若い院生さんが,いま,フランスに留学していますので,少しだけ時間を割いて調べてほしいと依頼をしました。もちろん,フランスの柔道指導者の国家資格免許の制度が,具体的にどんな内容のものであるのかを調べてもらいました。その第一報の返信がもどってきましたので,その概要をお知らせします。

フランスでは,1955年に,柔道指導者の国家資格を法律で定めたのが最初で,1972年には,具体的な国家資格制度が整備されました。それがBEES(Brevet dEtat dEducateur Sportif)〔※フランス語のソフトが入っていませんので,アクサンテギューなどの記号が抜けています。お許しのほどを〕です。

そのBEESの内容は以下のとおりです。
BEES 1級・・・18歳以上で2段以上・・・教育・組織(編成),基礎体力づくり,スポーツ活動の運営,各県やクラブでの指導。
BEES 2級・・・BEES1級を取得してから2年以上,3段以上・・・管理職としての技術の改良教育や訓練計画,運営を行う,レジョン,インターレジョン,国家レベルでの指導。
BEES 3級・・・BEES2級を取得してら4年以上・・・鑑定や研究業務,ナショナルレベルや国際大会レベルの指導。

もちろん,これだけではまだわからないことがたくさんありますが,それでも,おおよその制度の概要はわかります。きちんと組織立った試験制度になっていると思います。

この制度は2011年12月31日までで,2012年1月1日からは,BEESを改訂した新しい国家資格免許(資格試験証明書)が発行されている,とのことです。その内容は以下のとおりです。
DE JEPS(Diplome dEtat de la jeunesse,de leducation populaire er du sport)⇒BEESのレベル1.に対応。
DES JEPS(Diplome dEtat superieur de la jeunesse,de leducation populaire et du sport)⇒BEESのレベル2.に対応。
※BEESのレベル3.はフランス柔道連盟のホームページに公開されていない,とのこと。

そこで,このDE JEPSの試験内容をみてみると,大きく二種類の試験があることがわかります。
 1.formatif(一般教養試験)
 2.certificatif(能力証明試験)
の二本立てになっています。

さらに,ホームページに公開されている certificatif の参考例としては以下のような内容が示されているとのこと。
 1.「教育計画」をテーマに30ページほどのペーパーを作成し,20分で発表,その後20分の面接試験。
 2.「クラブの発展計画」をテーマに30ぺーじほどのペーパーを作成し,20分の発表,その後20分の面接試験。
 3.1時間ら1時間半の会議形式のセッションを行って,その後,20分の面接試験。
 4.技術試験。解説をしながら攻撃と防御のデモンストレーションと型の実演を行う。
というものです。

これを見るかぎりでは,さまざまな「計画」についてペーパーを作成する能力,そして,プレゼンテーションの能力,そして口頭試問に対する応答能力が,かなり厳密にチェックされるシステムであるということがわかります。

これがBEES 1級に相当する試験だというわけです。だとすると,レベル2.やレベル3.の試験内容がどんなものなのかが知りたくなってきます。いま,調べてもらったかぎりでは,ホームページに掲載されている内容はここまでだそうです。たぶん,国家資格試験を受験する人のための手引き書のようなものがあるはずなので,それを手に入れるよう依頼がしてあります。

いま,一番知りたいのは「一般教養試験」のレベルです。かなりレベルの高い内容らしく,柔道指導者の社会的ステータスが高いのも,ここに根拠があるようです。つまり,教養人としての評価が定着しているというのです。たとえば,文学や思想・哲学などの試験が,それもかなりレベルの高いものが課されているようです。

もう少し精確な情報が入ってきましたら,また,紹介したいと思います。
いまの段階で,あまり踏み込んだ論評はしない方がいいと思いますので,今回はこの程度の紹介ということで終わりにしておきます。

これだけでも,いろいろと考えさせられるものが多々ありますので,みなさんも,いろいろと考えてみてください。ではまた,次回の柔道情報まで。

1 件のコメント:

柴田晴廣 さんのコメント...

 現在柔道を除く他の武道では、範士、教士、錬士といった称号があります。
 この称号は武徳會に由来するもので、戦前は柔道も同様の称号がありました。
 現在武道の実力を示す段級制は嘉納治五郎が囲碁将棋の世界のシステムを採り入れたもので、帯の色で実力がわかるという明快さは画期的なシステムといえるでしょう。
 嘉納治五郎が囲碁将棋の世界に倣い段級制を採り入れる以前には、目録免許、皆伝免許といったものがあり、これは弟子を取る資格に直結する免許で上述の範士、教士、錬士といった称号も段級制採用以前の「免許」の流れを汲むものです。柔道界のみが範士、教士、錬士といった称号を廃止したいきさつについてはわかりませんが、日本にはもともと「免許」といった指導者の資格があったわけです。
 柔道界が範士等の称号を廃止したいきさつ等に触れてあれば、もっと面白く読めたように思います。