2013年3月6日水曜日

東京五輪招致支持率73%のなぞ。調査方法のマジックか?

 IOC評価委員会の現地調査がはじまって,連日,ニュースは盛り上がっている。しかし,上滑りのニュースばかりで,東京五輪招致の是非を考えるための素材はほとんどなにもない。そんななか,東京都民の支持率が73%という数字だけが一人歩きをしている。この数字ははたしてほんものなのか。わたしは大いに疑念をいだいている。

 東京五輪招致の最大のネックは支持率だと,前回の招致失敗の反省に立ち,東京都も招致委員会もやっきになって宣伝にこれつとめてきた。そのこと自体はなんの問題もない。なんとしても五輪を東京に招致したいと考える人たちにとっては,そこが命綱でもあるのだから。しかし,支持率の高さを示す「数字」が捏造されているとしたら,これは大問題である。

 3月2日のブログ(IOC評価委員長がやってきた。都民の支持率は大丈夫か)にも書いたように,東京新聞の読者の投書に,やはり・・・・と思わせる内容が書かれていた。そして,今日(6日)の東京新聞(こちら特報部)にも,自治会が回覧板で署名をとる方法に疑念が提起されていた。つまり,となりの家が賛成して署名しているのにうちが反対で署名しないというわけにはいかない,というのだ。これは,いくら自由意志による署名活動とはいえ,回覧板をまわすという方法はどう考えてみても奇怪しい。となり近所の眼を気にする人はまだまだ多い。そして,行動の仕方もおのずから制約をされる。

 読者の投書も,そのことを指摘したもので,投書者の自治会では回覧による署名をやめにして,署名簿の置いてある場所を指示して,そこに署名にきてもらうようにしたところ,署名者は「0(ゼロ)」だったという。このことの意味は重い。少なくとも,積極的に五輪招致に賛成という人はひとりもいなかったということだ。わざわざ署名をしにでかけてまで賛成の意思表示をする人はひとりもいないということだ。署名活動をしようとした自治会の役員の人も,ひとりも署名をしていない,というのも変な話ではある。たぶん,自治会の役員の人ですら,回覧板がまわってきたら,みなさん署名しているのでわたしも署名する,ということになるのだろう。東京都や招致委員会が,それを計算の上で「東京五輪招致」の雰囲気を盛り上げようと画策しているとしたら,それはまぎれもない「洗脳」であり,「詐欺」のようなものだ。

 そして,その結果が「73%」だったとしたら恐ろしい。

 この数字は,招致委員会が1月に電話による調査の結果だと聞いている(サンプル数は400?)。ただし,その電話が,どのような問い方をしたのか,誘導尋問的なものではなく客観性がどこまで保証されるものであったのか,そのあたりのことは闇のなかだ。

 しかも,この「73%」という数字は,すでに一人歩きをしている。メディアもその路線で報道をくり返している。都民はいつのまにか,みんな五輪招致に賛成なんだ,と無意識のうちに刷りこまれてしまう。公器を用いての「洗脳」であり,世論操作である。

 こうして,五輪招致反対の立場は無視されていく。のみならず,五輪招致に向けて一致団結することが正義であって,反対するものは国賊扱いされかねない。すでに,そんな雰囲気が生まれつつある。とりわけ,この数日は顕著である。こうして押せ押せムードに乗せて都民の支持率を,この数字に近づけようとしているように,わたしにはみえる。

 いずれ,しかるべきタイミングで,IOC評価委員会が独自の方法で支持率の調査を行うことになるだろう。そのときに,はたして「73%」という数字がでてくるかどうか,わたしには大いなる疑問である。もし,このときに「50%」を切ったとしたら,招致委員会の出した数字がいかにまがいものであったかということが露呈してしまうことになる。それは逆効果ではないか。それをも無視して押し切ろうというのだろうか。

 いま大事なのは,新聞社が独自の「客観的」な手法によるアンケート調査を行い,この「73%」という数字の的確性を検証することではないのか。それを放棄して,既成事実であるかのごとくこの数字をくり返すところに,こんにちのメディアの無能ぶりが露呈している。

 その典型的なものが,今日の東京新聞「こちら特報部」の記事だ。しかも,その仕上げをするかのように「デスクメモ」が小さく掲載されている。わたしは唖然としてしまった。開いた口が塞がらないとはこのことだ。以下に引いておこう。

 「いろんな問題も承知の上で,個人的には東京五輪をやってもいいと考えている。最近,この国は意見対立だらけだ。ちょっと疲れる。2020年はもっとそうだろう。東京五輪を開催し,みんなで面白かったね,良かったねと単純に言い合える機会があってもいいんじゃないかなあ。それが幻想でも。(栗)」

 これが「デスク」のことばか?冗談じゃない。これこそ権力の思うツボではないか。こんな程度の思考しかできない人がデスクとは・・・。情けない。

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