2013年6月15日土曜日

日本野球機構(NPB)よ,これでは全日本柔道連盟と同じではないか。

 またまた開いた口が塞がらない話。もう,すでに大きな話題になっているので,詳しいことは省略するが,統一球変更隠蔽疑惑の取り扱いについて,日本野球機構(NPB)の代表者会議で「コミッショナーの責任を不問」に付した,というのだ。

 これでは全日本柔道連盟と同じで,「自浄能力なし」とみずから認めたようなものだ。ということはNPBも全柔連も一つの組織体として「自律/自立」していない,ということだ。人間でいえば「未成年者」。

 だから,第三者委員会に丸投げするという。一見したところ「公明正大」であるかのような錯覚を起こすが,そうではない。自分たちの犯した不祥事を自分たちの手で決着をつける自浄能力を欠いている,ということだ。だとしたら,そういう組織・団体の幹部・執行部はすでに存在する意味を失っている。自力で管理・運営する能力がない,と認めたのだから。となれば,さっさとみずから身を引く以外にないではないか。

 それも許されないなにかが,その背景にはありそうだ。とてつもない「巨悪」が。だから,第三者委員会を立ち上げて,最終的には「とかげの尻尾切り」の落としどころを探そうとする。だって,第三者委員会もまた同じ穴の狢なのだから。

 加藤良三コミッショナーは「知らなかった」と嘯いたが,それはないだろう。統一球の検査結果は,検査のつど「すぐにコミッショナーに報告する」ことになっている,のだから。こんな簡単な検査結果の「報告」義務をサボタージュするとは,とても考えられない。にもかかわらず検査結果も統一球の変更も「公表」されなかったということは,どこかに「密約」がありそうだ。

 その手がかりとなりそうな記事が,今日の『東京新聞』に,ほんの少しだけ,ちらり,と載っていたので引用しておく。

 2011年に導入した統一球は,製造したミズノ社との二年契約が終わった昨年末に契約を延長した。12球団は昨年11月の実行委員会で,延長するかどうかの判断をNPBの下田邦夫事務局長に一任していた。この日の会議では,各球団にも責任があることを確認。日本ハムの島田利正球団代表は「(下田事務局長に)一任したところで,すでに12球団にも責任が生じていると思う」と話した。

 統一球をミズノが契約を延長できるかどうか,あるいは,他のメーカーに変えられてしまうのか,という問題はミズノにとっては死活問題にもつながる大問題だ。だから,あの手この手で「契約延長」のために最大限の「努力」をしたことは,ほぼ,間違いないだろう。このときに,公にはできない,なにか特別の密約があったのではないか,とこれはわたしの推測。この問題はそのうち,優秀な新聞記者がいれば,いずれ明らかになることだろう。それを楽しみにしたい。

 さきの新聞記事で気になることは,事務局長に一任した段階で,各球団にも責任がある,という認識をみんなが共有していることだ。だとしたら,みんなで,どこが間違っていたのかを検証すべきなのに,それはやってはいない。しかし,これは契約延長手続きの一任であって,このこと自体は今回の「統一球変更隠蔽」とはなんの関係もない。にもかかわらず,「責任が生じている」と問題をすり替えているところが,納得できない。

 もう一点は,記事のほかのところで「コミッショナーはオーナー会議で任命されるため,各球団は自らの任命責任を問われることを恐れているようにも見える」という点である。これは逆ではないか。任命責任があるからこそ,コミッショナーの今回の対応についてきびしく糾弾すべきではないのか。なにかに「怯えて」腰が引けているようにみえて仕方がない。

 加藤良三といえば,外務官僚としてエリート・コースを歩み,とんとん拍子で出世し,若くしてアメリカ大使をつとめ(最長の6年間),アメリカのシンクタンクからなにやらの「賞」を受けた人と記憶している。東大法学部出身の俊才である。その実績からして,統一球変更隠蔽疑惑を起こすような人物にはみえない。しかし,それとこれとはまったく関係がない。今回は,ひとりの人間としての判断能力が問われているにすぎないのだ。

 もっと厳密に言ってしまえば,コミッショナーの「知らなかった」という第一発言が大問題なのだ。組織のトップが組織内の,それも統一球を変更するかしないかという大問題について「知らなかった」では済まされまい。もし,ほんとうに「知らなかった」としたら,そのことの方がもっと問題だ(賢明なダルビッシュ投手はみごとに問題のツボを指摘している)。

 ことの真相はいつも「薮の中」。これから,どこまで事実関係が明らかにされるのか,そこが最大の課題。たぶん,大相撲のときと同じように,なんだかわかったようなわからない,つまらない「尻尾切り」で終わりとなりそうだ。いつも責任はうやむや。

 検察がにせ調書を裁判所に提出しても,責任は問われない,そういう国にいったいいつからなってしまったのか,そのことの方がもっともっと大きな問題だ。

 でも,こういうNPBの対応の仕方のなかに,いまの,日本社会が抱え込んでしまった抜きがたい病根の典型的な例をみる思いがする。なさけないことではあるが・・・・。

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