2013年8月24日土曜日

みやびブックレット『myb』第45号・秋号がとどく。一陣の涼風を呼ぶ心地よさ。

 みやび出版の伊藤さんから最新のみやびブックレット『myb』第45号・秋号がとどく。いつものことながら,わたしの好みの著者の文章から拾い読みをはじめる。このコンパクトなブックレットのなかに,各界の第一線で活躍する人たちの凝縮された名文が詰まっている。わたしなどの足を踏み入れたこともない世界へ,一瞬にして招き入れてくれる。ある種の異次元体験のような快感が走る。それが楽しみで,毎号,首を長くして待っている。

 まっさきに読んだのは,ほかでもない,三井悦子さんのエッセイ。「祝祭の身体にふれる──バスクの祭りをたずねて──」。わずか4ページのなかに,みごとにバスクの祭りの匂いを書き込んでいて,感動した。すでに,バスクの祭りのなかで踊られる「アウレスク」とはどういうダンスなのか,ということについて研究会で映像をみながら,みんなで議論をしていたこともあって,かなりのレベルで理解はしていたつもりであったが,三井さんの文章を読んで,さらに深く知ることができた。

 バスクの人たちにとって,祭りのときに踊る「アウレスク」は,その土地に住む人びとにとっては不可欠なものであり,血肉と化している。シモーヌ・ヴェイユが言うところの「根をもつこと」のひとつの典型をそこに確認することができる。それは,ヴェイユが言うところの「魂の欲求」から沸き上がってくるものであり,いわゆる「生の源泉」に触れる体験なのだ。

 竹内敏晴さんがめざした「じかに触れる」という体験もまた,こういう磁場をめざしたものであったに違いない。三井さんは「竹内レッスン」の研究者でもあるので,当然のことながら,「じかに触れる」という体験をどこかでイメージしながら,このエッセイを書いていたに違いない。そんなことも,わたしには伝わってくる名エッセイだった。三井さんはますますいい世界に遊ぶようになったなぁ,と感動すら覚えた。

 なにを隠そう,三井悦子さんはこの22日に,ふたたびバスクの祭りと「アウレスク」を求めて旅立っていったばかりである。いまごろは,ホテルでほっと一息入れながら,祭りに関する情報をかき集め,これからの行動予定を夢見ているに違いない。ちょっぴり,いやいや大いに悔しいが羨ましい。9月には三井さんが世話人の研究会が名古屋で予定されている。そこでの「みやげ話」をいまから楽しみにしたい。

 つぎに読んだのは,「般若心経は英語で読むとよくわかる・8」最終回。竹村日出夫さんの隠れファンで,これまでも欠かさず,まっさきに読んできた。もう,最終回になるのがもったいないくらい。でも,どこかに書いてあったように,近々,単行本として世にでるということなので,これまた楽しみにしているところ。

 そして,いつも読後に深く考え込んでしまうのが,「気になる一首」と「気になる一句」。
 一首の方は「憤懣が脚にあらはになりそうで今日は裾長のスカートをはく」(小島ゆかり)。これを読んだ瞬間に,まったくの異次元の世界に引っさらわれたような感覚に陥ってしまった。たった,一首で,こういう世界を謳いあげる威力に感動。
 一句の方は「炎天妻に火をつけて水のむ」(松尾あつゆき)。ウムッ?なんのことか?と思って内藤呈念さんの解説を読む。どっすーンという爆弾の音がした。一気に,長崎の原爆の惨状の世界に引っさらわれてしまった。そして忘我没入して読んだ。戦争はどんなことがあっても回避しなければならない,としみじみと思う。
 一首も一句も,それぞれ1ページずつ。たった,これだけのスペースに,それぞれの世界が凝縮している。ブックレットの本領発揮である。編集者の伊藤さんの腕がしなるところ。

 という具合にして,つぎからつぎへと拾い読み。

 最後に,今回の特集である「般若心経を繙こう」を読む。4人の筆者のなかの1人に,なんとこのわたしが加わっている。伊藤さんからのお誘いは「般若心経とわたし」といった感じで原稿を書きませんか,というものだった。まったく個人的な体験でいいですか,はい,結構です,ということで書くことになった。蓋を開けてみたら「般若心経を繙こう」という特集タイトルになっている。あっ,と思わず声をあげてしまった。案の定,わたしひとりが浮いている。なぜなら,なにも「繙いて」はいないからだ。恐る恐る他の著者たちのものを読ませていただく。うーん,なるほど,と唸ってしまうほどの「繙き」方をしている。わたしひとりが「個人的な体験」を語っているにすぎない。おやおや?でも,伊藤さんはこういうことも計算の上で,わたしには「体験」を求めたのかもしれない。よく言えば,生活のなかに浸透し,骨肉となる「般若心経」の側面を,伊藤さんはわたしに求めていたのだ,と。だとすれば,合格か,と。辣腕の編集者,恐るべし。

 というわけで,今回はここまで。
 とても,面白いブックレットですので,ぜひ,手にとってみてください。
 みやび出版のURLは以下のとおり。
 http://www.miyabi-sp.biz-web.jp/

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