2013年10月11日金曜日

葛西臨海公園にカヌー競技のスラローム・コース建設予定とか(東京五輪考・その1.)。

 人と待ち合わせるときは本屋さんを利用することが多い。こちらが遅刻しても,逆に相手が遅れてきても,そんなに気にする必要がないからだ。本屋での時間はいくらあってもいい。つぎからつぎへと新しい本がでてくるので,それらをめくっているだけで退屈はしない。

 そんな折には,滅多に手を伸ばすことのない週刊誌もめくってみる。これが意外に面白い。もちろん,例によって記事の見出しと内容には大いなる落差があるのを承知の上でのことである。そんな中に東京五輪がらみの記事がちらほら散見される。大手新聞はもっぱら「経済効果」の話題ばかりだが,週刊誌はそれとは別の裏事情をすっぱ抜く路線をいこうとしているようだ。

 「東京五輪の陰で進む8つの”浄化作戦”」という表紙の見出しにつられて,『SPA!』をめくってみた。「8つ」も浄化作戦があるのか,と不審に思い確認してみた。見出しを箇条書きにしてみると以下のようである。
 1.ゲイの”ハッテン場”がオリンピックで潰されてしまう!?
 2.都内の貴重な干潟が数日のカヌー競技のために破壊される!
 3.IOC委員が難色!? 五輪を口実にエロ本が消える
 4.東京都の”浄化作戦”で,風俗店や不法滞在者の大規模摘発が行われる?
 5.視察ルートからも排除。すでに薦められているホームレス一掃作戦
 6.高齢者が長年住んでいる都営住宅の立ち退き
 7.マンガやエロゲームも規制される!?
 8.新宿コールデン街が再開発でなくなる?

 相変わらずの週刊誌らしい見出しばかりが目につく。しかし,2.都内の貴重な干潟が数日のカヌー競技のために破壊される!は,五輪の施設がらみの問題として看過できない問題を含んでいるので,少し踏み込んでおきたい。まずは,記事の要点を引用しておこう。

 東京都江戸川区の葛西臨海公演。この公演の西側の約半分に,東京オリンピックカヌー競技のスラロームコースが建設される予定だという。オリンピック終了後も,カヌーやラフティングの施設として残すという。この公園は,都内でも貴重な干潟で,25年をかけて整備してきたもの。オオタカ,ウグイス,ヤツガシラなどの野鳥226種,昆虫140種,クモ80種,樹木91種,野草132種が観察され,貴重な環境を保持。絶滅危惧種のクロツラヘラサギも確認されている。この干潟が,人工的な激流を造ることで潰されるという。

 カヌー競技を軽んずるつもりはまったくないが,なにゆえに葛西臨海公園を半分潰してまでして,スラロームコースをここに設けなくてはならないのか,しかも,ここに恒久施設として保存される理由はなにか,二つの点で疑問が残る。

 前者の問題は,競技施設を至近距離に整えるという五輪招致のセールス・ポイントの約束ごとであるので,やるしかないという考え方もできよう。しかし,それにしても25年もかけて整備してきた野性味たっぷりの臨海公園を半分潰してしまわなければならない理由はないだろう。ほかの代替地がないわけではない。ただ,利便性という意味では最良の場所だ。もう,すでに,いろいろの反対運動(地域住民を中心としたもの)も展開していると聞いているので,これから大きな問題となってくるだろう。

 後者の恒久施設化は,大いに問題あり。カヌー競技の普及という点では大いに役立つだろうけれども,その維持・管理という点では巨額の金を必要とする。その金をどこから捻出するのか。競技団体が負担するにしろ,東京都が負担するにしろ,いずれにしても「税金」に跳ね返ってくる。それだけの利用価値があるのだろうか。それなら,東京都の郊外に(奥多摩か,あるいは多摩川のどこかに)オリンピック記念施設として設置し,そこをカヌー競技普及センターのようにして,のちのちまで多くの人びとにカヌー競技を楽しんでもらう方法だってあろう。

 いずれにしても,このカヌー競技場建設計画には,いろいろと難題が重なっているように思われる。このほかにも,いろいろと問題点があって,専門家の建築家集団も立ち上がり,シンポジウムを開催したりして,こんごの対応策を練っているという話もある。これらもふくめて,これから少しずつ,問題点をとりあげ,考えてみたいと思う。

 今日のところは,とりあえず,ここまでとする。
 

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