2013年10月23日水曜日

ヒトラーのナチズムを想起させる斎藤美奈子さんのコラム「精神の総動員」。おみごと。

 いいわけがましいことですが,昨日(22日)書いた2本のブログは,ヒトラーのナチズムと酷似した雰囲気が濃厚になってきた昨今の日本の安倍政権の猪突猛進ぶりを念頭に置いて書いたものでした。ですから,どこかでヒトラーのことに触れようと思ったのですが,その余裕もないまま,終わらせてしまいました。が,いつか,安倍政権の動向とヒトラーのナチズムのあまりの酷似ぶりについては書こうと思っていました。

 そうしたら,さすがに斎藤美奈子さん。今日(23日)のいつもの「本音のコラム」で,みごとにその点を突いていて,我が意を得たりと拍手喝采してしまいました。その出だしだけでも引いておきたいと思います。その切り出し方といい,テンポといい,心地よいことこの上なし,です。

 「15日の臨時国会における所信表明演説で『意志の力』という語を連発した安倍晋三首相。
 『今の日本が直面している数々の課題』『これらも<意志の力>さえあれば,必ず,乗り越えることができる。私はそう確信しています』
 おおっと,そんな単語を使って大丈夫か。『意志の力』はナチスの常套句(じょうとうく)だぞ。1934年のナチ党全国大会の記録映画のタイトルは『意志の勝利』だぞ。と心配したのだが,それを指摘したのは民主党の海江田万里代表だけで,メディアはみんな無視。揚げ足を取る絶好の機会なのに。」

 ──中略。このあとに「国民精神総動員運動」の口火を切った,当時の近衛文麿首相の演説を引いて,最後に,つぎのように落ちをつけています。

 「『意志の力』や『精神の動員』に頼るようになっちゃおしめえよ,と過去の歴史は教えている。まさか首相はご存じなかった? それとも,知ってて先達に学んだだけかしら。」

 斎藤美奈子節が全開。なんとも心地よきことよ。

 ここにでてくる1934年のナチ党全国大会の記録映画『意志の勝利』,これも1936年のベルリン・オリンピックの記録映画『オリンピア』を撮った映画監督レニ・リーフェンシュタールの作品です。この『意志の勝利』がヒトラーに高く評価され,つぎの『オリンピア』も全権委任されたと聞いています。レニ・リーフェンシュタールについては,いろいろ議論はあるようですが,いずれにしても,両作品ともヒトラー・ナチズムのプロパガンダとして大きな役割を果たしたことは間違いありません。「力」としかいいようのないある「なにか」を,レニ・リーフェンシュタールは追いかけていたことは,第二次世界大戦後に出された写真集『ヌバ』(アフリカの裸族の写真集,ここには「すもう」が登場します)をみれば,とてもよくわかります。

 ちなみに,『オリンピア』(Olympia)は通称で,精確には,『民族の祭典』と『美の祭典』の二部作になっています。この二部作の総称として『オリンピア』が使われているという次第です。なお,この記録映画は,現在でも『民族の祭典』というタイトルで市販されていますので,まだ,ご覧になっていない方はぜひどうぞ。いまの日本や世界の情況を生きるわたしたちに,このレニ・リーフェンシュタールの作品がどのように写るか,試してみるといいと思います。ここには「力」こそが「正義」である,という隠されたメッセージがあらゆるカットとなって表現されているように,わたしは思います。

 ナチス・ヒトラーにとっては,この「力」こそが大テーマでした。よく知られた「ヒトラー・ユーゲント」(Hitler Jugend:ナチズムを体現する青少年運動)の中核をなすテーマは「力」(Kraft)でした。そこでの合い言葉は「歓喜力行」(Kraft durch Freude:喜びに満ちた力)でした。この「歓喜力行」というみごとな翻訳語は,第二次世界大戦中の青少年教育の標語としても用いられていました。わたしは国民学校(小学校ではありません)2年生のときに,大きな声で「カンキリッコウ」と,わけもわからないまま言わされたことを記憶しています。

 日独が,あれほどシンクロした時代はなかったと思います。でも,こんにちのドイツは,日本のフクシマの教訓を生かして,いち早く「脱原発」宣言をし,再生可能エネルギーへと舵を切り,まもなく電力を輸出できるところまできているといいます。アベノミクスとは「正反対」のベクトルを選択して,みごとなまでの決断と実行力を発揮しています。日本とは大違いです。残念ながら,日本は,とてもとても危険な「未来」に向かって突き進んでいる,としか言いようがありません。

 ドイツは徹底してナチズムを拒否し,「力」に頼らない社会をめざしているというのに,なにゆえに安倍晋三首相は「意志の力」を旗印に掲げるのでしょうか。すべては,強い国家,強い軍隊をもつためのウォーミング・アップとして,まずは国民の「意志の力」が必要だからでしょう。

 このまま安倍政権の猪突猛進が野放しにされてしまうと(議会運営上は3年間は可能。だから恐ろしい),東京五輪も気がつけば「ベルリン・オリンピック」の再来をみることになりかねません。「歓喜力行」という旗を先頭に,完全に洗脳された青少年たちが隊列を組んで,「ハイル・ヒトラー」(Heil Hitler !),いな「天皇万歳!」と叫びながら,東京都内の目抜き通りを行進しかねません。そんな悪夢だけは見たくありません。

 そのためにも,まずは,「特定秘密保護法」を阻止しなくてはなりません。風雲,急を告げています。今日も明日も,そして,25日まで,首相官邸前の集会が開かれます。なんとか時間をやりくりして出かけようと思っています。

〔追記〕文意が逆転してしまう文章の乱れがありましたので,急いで訂正させていただきました。ご指摘くださった読者の方にこころから感謝です。ありがとうございました。いつも,かなり慌てて書いていますので,こういうことがないよう注意したいと思います。ありがとうございました。重ねてお礼を申しあげます。

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