2014年2月25日火曜日

歩いて歩いて,眠って眠って。27日退院。

 医療の現場とは,長い間,まったく無縁でしたので,いろいろ驚くべき経験が今回はありました。なにごとも経験が大事ですが,今回の経験はあまり褒められた経験ではありません。


 まず最初に驚いたのは,手術の翌日には「歩きなさい」とこともなげに厳命されたことです。なにを言ってんだろう,この医者は,と腹のなかでは思いました。が,厳命とあらば歩くしかありません。からだ中,管がいっぱいつながっていて(点滴,尿管,ドレーン,など),それらを引きずりながら病室の中を歩け,というのです。
 最初の難関は,ベッドから起き上がること。こちらは看護師さんが幇助をしてくれますが,それでも激痛が走ります。ベッドに腰掛けた姿勢でひとやすみ。そこから立ち上がるのは自力です。これが容易には立てないのです。手を使うと傷が痛みます。全体重を両足に乗せて,脚力だけで立ちます。すると,意外に痛みが少ないのです。立つには立ったものの,その姿勢は腰抜けのみじめなものです。
 そこからの第一歩。どちらの足から踏み出そうかと考えてしまいます。ようやく決心して最初の一歩を踏み出します。踏み出したかかとが床についた瞬間に腹部全体に激痛が走ります。「ウーッ」と前かがみになったまま呼吸が止まっています。少し落ち着いたところで姿勢をやや正して,つぎの一歩です。またもや「ウーッ」と前かがみと呼吸停止です。こんなことの繰り返しです。
これが終わるとベッドに横たわる地獄の試練が待っています。冷や汗たらたら流しながら,ようやく横たわります。このあとは不思議なくらい,あっという間に眠りに落ちていきます。尿管をつけていますので,トイレに行く必要はありません。その分,ぐっすりと熟睡できます。ちょっと眠ったなという感覚なのに,すでに3時間,4時間と眠っています。
 術後3日目には尿管がはずされてしまいました。こんどは,自力でトイレに行かなくてはなりません。看護師さんは幇助してくれません。まるで鬼軍曹のように,そばにいて「頑張れ,頑張れ」と応援してくれるだけです。ベッドから起き上がるのも,トイレからもどって横たわるのも,全部,自力です。これが,わたしにはこたえました。そのつど地獄の苦しみを味わわなくてはなりません。
 このトイレ行きが夜中はなんと1時間おき。ひっきりなしに点滴をつづけていますので,水分過剰になっているのではないか,と勘繰ったりしていました。そして,毎回,毎回,冷や汗たらたら。全身,汗まみれになって,必死の格闘です。その代わり,ベッドに横たわって呼吸が落ち着いたとたんに,眠りに落ちています。爆睡です。いま,考えてみますと,この夜中の「特訓」が奇跡的な回復にとって,特別の効を奏したのではないか,そんな気がします。
 術後4日目には,病棟の廊下を歩け,という厳命です。前にも書きましたように東西に長い廊下で,全長約100メートル。行ってもどってくると約200メートル。これを一日10往復。計2㎞。これがノルマ。もちろん一歩,一歩ごとに傷に痛みが走ります。でも,こちらは我慢すればできる我慢。冷や汗がでるほどではありません。それでも歩いたあとは疲れ切っていますので,一休み。ごろりと横になったとたんに爆睡です。
 歩いては眠り,歩いては眠り,の繰り返し。よく歩き,よく眠りました。その結果が,27日の退院につながったのかと思うと,あの鬼のような医師のひとことに感謝感激です。それをこともなげに言い放つあたりは,ただのふつうの医師ではないな,と感心してしまいます。優しい,まだ若いジェントルマンですが,その眼光はなかなかのものを感じています。
 ちなみに,術後8日目に当たる今日(25日)は,退院が視野に入ったこともあってか,自主的に距離を延ばしています。いま現在(午後8時20分),14往復。就寝前にもう2往復するつもりですので,今日の合計は約3.2㎞歩いたことになる予定。その分,爆睡もしています。ですから,一日があっという間に過ぎ去っていきます。
 さて,明日は何㎞歩いて,何時間眠るのでしょう。
 では,今夜はこの辺で。お休みなさい。
 
 

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