2014年7月24日木曜日

NHK の凋落ぶりがこのところ目にあまる。もはや,その使命は終わったか。

 NHKの凋落ぶりがこのところ目を覆うばかりだ。日を追ってジャーナリズム精神を喪失し,無反省に堕落していく。政権党にここまで迎合しなくてはならないのか,と情けなくなる。やはり,受信料を払うのはやめよう。いまや,国家を没落させるための片棒を担いでいる「駕籠かき」と同じだ。そのまた片棒を担がされるのはごめんだ。それにしても,情けない。

 きっと,NHKのなかには優れたジャーナリズムの精神を身につけた立派な人たちもたくさんいらっしゃるに違いない。なのに,その人たちの口封じが徹底し,窓際に追いやられているのだろう。その顕著な例を昨夜(23日)のテレビでみてしまった。腹が立って腹が立って,許しがたい,と久しぶりにテレビに向かって吼えてしまった。

 その番組は,NHKとしては定番となっている「歴史秘話ヒストリア」。今回は「びわ湖と日本人驚きの秘話を徹底解明」▽湖畔に極楽浄土&幻の都?!偉人達の夢と信念」というもの。この番組表をみたときに,わたしのなかにある予感が走った。「ナヌウッ?なにをどこまで掘り下げるのかなぁ」「古代のびわ湖は謎だらけだからなぁ」という期待が一気にふくらんだ。

 しかし,この一話に関しては,ほとんどなんのコンセプトもない,単なる知識の断片の寄せ集め。それもきわめて低俗な,お粗末な内容。「内容がないよう!」などと駄洒落を言っている場合ではない。中学生向けの番組だとしてもお粗末。視聴者をバカにしている。

 取り上げられた話題を順にあげておくと以下のとおり。

 日本最大のパワースポット・竹生島(ちくぶじま),と冒頭でぶち上げ,これは?と期待を膨らませる。しかし,である。竹生島についての,単なる故事来歴を並べるだけで,なんの説得力もない。映像としての迫力もない。この程度なら,パワースポットのすごいところはほかにいくつもある。それらに比べたら平凡そのもの。じつは,全国に竹生島由来の神社があちこちに散在していることをわたしは知っている。そして,竹生島由来の民俗芸能も伝承されている。しかも,それらはみんな山奥の僻地に限られる。言ってみれば「隠れ里」。なぜか?この謎ときでもしてくれるのかと期待したのだが,一切,無視。それもそのはず,権力に抵抗した痕跡が残されていて,その「怨念」が秘められたパワーとなっているはずだ。だが,そのことに触れるわけにはいかない,とディレクターは判断したのであろう。だから,パワースポットのなんたるかは,なにも伝わってはこない。

 つづいて,なんの脈絡もなくいきなり,こんどは最澄さんをとりあげる。大津生まれで,延暦寺のもととなる一乗止観院を建てた,と。そこの御本尊は薬師如来。以後,蒲生寺にも薬師如来を祀る。びわ湖周辺に薬師如来を祀る寺が45カ所ある,と。薬師如来は東の浄土をおさめる仏さまで,ここにその信仰の拠点があった証拠だ,と。たったそれだけ。

 こんどはまた,なんの脈絡もなく,いきなりこの地に伝わる白髭縁起を紹介。これはびわ湖の神さまで,そのもとは猿田彦の神である,と。猿田彦の神は道案内の神さまとしてよく知られている,とたったそれだけ。

 と思っていたら,こんどは中大兄の皇子の話。大和から大津に都を移すときに大和の民衆の反対運動があったとか,近江大津宮を造営して都を移したがその跡地が見つからず,昭和45年の発掘で発見されたとか,そこにはオンドルの設備があったとか,ここで天智天皇を名乗ったとか,ここは高句麗との交易の拠点であったとか,最後には壬申の乱で,天武天皇に滅ぼされたとか,そんなありきたりな事実を列挙するのみ。なにが歴史秘話なのか,と腹が立ってくる。このあたりのことも,井上靖の小説にはもっともっと詳しく描かれていて,多くの人たちが熟知していることだ。それらを超え出てこそ「歴史秘話」ではないのか。

 最後は,これまた唐突に,松尾芭蕉の話。芭蕉はいたくこの地を気に入って,晩年の数年を過ごした,と。そのときに,びわ湖についてこんな俳句を残しているとか・・・・あとはどうでもいい芭蕉の話ばかり。つまり,みんな知っていることばかり。視聴者をバカにしているのか,と思ったらここでこの番組は終わり。

 つまり,この番組に一貫性がなにもないのである。びわ湖が日本最大のパワースポットだ,という断定をだれがしたのか,わたしは初耳だ。しかも,その理由・根拠はなにか,ということはなにも触れていない。そして,そのあとにつづく話題はいったいなんのためなのか,つまり,びわ湖にまつわるこんな話がありますということを列挙しただけの話。ならば継体天皇にまつわる話もすべきではなかったのか。びわ湖周辺を拠点にして,朝鮮半島との交易で財をなし,権力を握る地盤を固めたところという有力な説もある。しかし,この話も詳しく展開すると,現政権にとってきわめて都合の悪いところに行き着いてしまう。だから,外したに違いない,とわたしは推測する。

 こんななんの意味もない,つまり,視聴者になにごとかを考えさせる材料がなにもない,単なる与太話をなんの意図もなく集めてきて,そのまま番組にして,それを垂れ流して平気でいられるNHKの制作部の幹部の人たちは,いったい,なにを考えているのか。びわ湖の古代は,ほじればほじるほど朝鮮半島との関係が露呈してくるはず。そのことも充分承知の上で,そういう危ない話はそうっと避けてとおって,どうでもいい話を列挙して「歴史秘話」だという。こんなことは秘話でもなんでもない。時間の無駄だ。

 しばらく前までは,少なくとも第二次アベ政権が誕生する前までは,かなりヘビーな番組があった。つまり,政治の問題も含めて,徹底的に分析をし,どこにどのような問題があるのかを提示し,視聴者に感動を与え,しかも,じっくりと考えさせる番組がいくつもあった。それらが一斉に姿を消してしまった。少なくとも,国民の多くが,もっとも信頼して見ているであろうNHK第一ではそうだ。だから,困ったことなのだ。

 NHKはもはやその本来の使命を終えてしまった。残念ながら,そう言わざるをえない。
 悔しかったら,イスラエルが侵攻したパレスチナのガザ地区で起きていることを,つまり,イスラエルによる武器もなにも持たないパレスチナの一般市民を対象にした,極悪非道の「人殺し」の現実を,しかも,日々その死者が増え続けている現実を,毎日,ニュース番組のトップ情報として伝えてみるがいい。そして,そのイスラエルに武器を輸出しようとしているアベ君の非常識を批判してみるがいい。それでこそ,国民のための有料放送としての資格が担保されるというものだ。

 こうして,日本国の「破局」(カタストロフィ)のときが,ますます近づいてくる。
 かくなる上は,ジャン=ピエール・デュピュイの本(たとえば『聖なるものの刻印』『ツナミの小形而上学』など)をよく読んで,「破局」を遠ざける方途を考え,実行していく以外にはなさそうだ。まことに重い課題がわたしたちに覆い被さってきている。



 

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