2014年12月11日木曜日

「未来を選択する選挙」『世界』1月号特集が面白い。

 強い思い入れとともに,深く,長くかかわってきてスポーツ史学会の年次大会が富山大学で開催され(6日・7日),気持がそちらに向かっていました。もどってきて山のようにたまっていた雑用をさばいていましたら,書類の山の中からひょっこりと雑誌『世界』1月号がでてきました。雑用そっちのけで,早速,読み始めました。

 今月の特集は「未来を選択する選挙」。内橋克人,山口二郎,高安健将,柿崎明二,といった論客がそれぞれの立場から,なるほどと納得させられる,説得力のある論考を寄せています。いずれも,安倍晋三首相の身勝手な解散・選挙を糾弾し,アベノミクスに騙されてはいけない,と警告を発しています。ざっと読むだけで爽快な気分になれます。

 なのに,メディアはさかんに自民党圧勝を唱え,げんなりさせられてしまいます。いったい,どういう調査にもとづいてこのような報道をしているのか,疑問をいだかざるを得ません。たぶん,蓋を開けてみるとメディアの予想とは異なる結果が待ち受けているのではないか,と密かに期待しているところです。少なくとも,わたしの周囲の雰囲気からはそんな予感がします。

 もう一本の特集は,「戦後70年 歴史改ざん主義とたたかう」というもので,吉田裕,佐藤健生,西谷 修,高橋哲哉の4氏が,これまたとてつもなく面白い論考を展開しています。なかでも馴染みのある西谷修さんの論考「重なる歴史の節目に立って──戦後70年と日本の『亡国』」が,わたしのこころに深く響いてきました。いつものことながら,眼のつけどころが素晴らしい,と感動です。また,高橋哲哉の「極右化する政治──戦後70年という岐路を前に」もわたしにとっては興味深い内容でした。さらには,吉田裕の「歴史への想像力が衰弱した社会で,歴史を問いつづける意味」もまた,わたしの関心事であるスポーツ史との関連で教えられるものが多くありました。歴史とはなにか,いまこそ,問われるべきではないか,と思いました。

 最近になって初めてお話をさせていただいた嘉田由紀子さん(前滋賀県知事・現びわこ成蹊スポーツ大学学長)とわたしが関心をもつシンボジウムにしばしば登壇される宮本憲一(環境経済学者・前滋賀大学学長)さんとの講演と対談が掲載されており,こちらも身を入れて読まされることになりました。お二人は,もう,長い間の知己で,びわ湖の環境問題についてもともに熱心に取り組んでこれらた間柄ですので,話がとてもよく噛み合っていて,多くのことを考えさせられました。人間が生きるということの原点をしっかりと見据えたお二人の思考が,わたしの関心事である「スポーツする身体」や「スポーツする人間」ともリンクしていて,我が意を得たりと思うこともしばしばでした。もっと読みたい・・・と思いました。

 もうひとつ,面白い読み物がありました。それは,新連載「建築から都市を,都市から建築を考える」というものです。内容は,建築家の槇文彦さんに松隈洋(京都工芸繊維大学)さんが聞き手になって展開される対談です。その冒頭に,「新国立競技場計画で何が問われたのか」が語られていて,コンパクトに問題の所在が明らかにされています。もう,すでに,何回も槇文彦さんが登壇されるシンポジウムにも参加してきましたので,ここで言われていることは痛いほどよくわかりました。こういう建築界の重鎮の声をまったく無視して顧みないJSC(日本スポーツ振興センター)という組織の官僚ぶりにはあきれ果てるしかありません。東京五輪2020の舞台裏のひとつが,ここにも如実に現れています。その意味で,槇文彦さんの,この連載がどのような展開となっていくのか,わたしにはとても興味深いものがあります。

 最後に,沖縄県知事選にちなんだお二人の論考が,これまた読ませる内容でした。
 おひとりは,松元剛(琉球新報)の「沖縄(シマ)という窓・特別編──沖縄の尊厳をかけた県知事選 翁長氏圧勝の深層」です。こちらも,西谷さんたちが組織したシンポジウムで,直接,お話をうかがっていましたので,すべて納得のいくもの,あるいは,「おさらい」の気分で読ませていただきました。相変わらずの説得力のある論考になっていて,感動しました。やはり,沖縄を理解するには,ヤマトの人間には限界がある,としみじみ思いました。沖縄の地に足をつけて立ち,空気をいっぱい吸わないことには,頭でっかちの,身勝手な理解にしかならない・・・と。
 もうおひとりは,佐藤優(作家,元外務省主任分析官)さんの「『沖縄人性』に誠実に向き合う──県知事選とアイデンティティ」です。こちらもまた,佐藤優の独特の論陣の張り方が面白く,こういう視点からの見方というものが,わたしにはまったく欠落していましたので,とても勉強になりました。この人も,半分,沖縄の血が流れていますので,ヤマトンチュの言説とは違います。沖縄を語るときには,ひときわ体重がかかっているように思います。

 この他にもとりあげたい話題が満載です。たとえば,連載「東北ショック・ドクトリン」(古川美穂・ジャーナリスト)は第9回で最終回とあり,もっとつづけてほしい連載でした。でも,普通のメディアでは知ることのできない多くのことを学ぶことができました。感謝したい気持でいっぱいです。

 というようなわけで,ぜひ,『世界』1月号を手にとってご覧いただきたいと思い,こんな雑文を書いてみました。お許しのほどを。

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