2015年1月22日木曜日

「東京五輪2020」を考える。神戸市外大講義用メモ。

 0.はじめに
 神戸市外国語大学の竹谷和之さんから,急遽,特別枠での講義(1コマ分)の依頼が飛び込んできました。スポーツ文化論という授業の最後の1コマで,「東京五輪2020」を考える,というテーマで,とのこと。もちろん,喜んで引き受けることにしました。時間は明日(23日)の午前12時45分から。そこで,大急ぎで講義用メモを作成してみました。講義内容の要点だけですが,以下のとおりです。

 1.国民不在の東京五輪2020・・・民主主義の否定。
 2020年はまださきのことという認識が一般的なようですが,その準備は着々と進んでいます。しかも,国民の眼のとどかない密室・闇のなかで。だれが,どのような議論をして,どのように決定しているのか,まったく不明です。議事録の情報公開を求めても,応答があるのは3カ月,4カ月後のこと。しかも,議事録の8割は真っ黒に塗りつぶされていて,内容は「〇〇〇案が賛成多数で決定した」くらいのことしか知ることができません。なぜ,このようなことが,平然と行われているのでしょうか。しかも,いまも,たのスタンスで粛々と進められています。東京五輪2020はいったいだれのためのものなのでしょうか。この問題をメインにして考えてみたいと思います。

 2.国立競技場解体とザハ案による新国立競技場建造
 東京五輪2020の五輪招致が決定される前から,この案が浮上し,わたしたちが与り知らぬ間にことは運ばれていました。気づいたのは,新国立競技場建造のためのデザイン・コンペで,ザハ案が第一位に選定され,そのデザインが公表されてからでした。しかも,想像をはるかに超えるとてつもなく巨大な建造物だ,ということが明らかになってからのことでした。これに,まっさきに異議を申し立てたのは槇文彦さんを筆頭とする建築の専門家たちでした。つづいて多くの市民団体も声を挙げ,なにが問題なのかを,公開でシンポジウムを,何回もにわたって開催しました。そこに,事業主体であるJSC(日本スポーツ振興センター)の関係者を招聘しましたが,一度も,だれも,参加しませんでした。いまも,口をつぐんだままです。その代表者は安藤忠雄さんです。なぜ,そういうことになってしまうのか。闇から闇へとバトン・タッチして,この大事業が推し進められています。国民不在というよりも,はじめから意図的・計画的に国民を排除してきた,と言った方が正しいでしょう。ここに,日本という国家の危機が隠蔽されている,とわたしは考えています。

 3.異議申し立てをしている諸団体とその活動について
 3-1.日本建築家協会
 3-2.神宮外苑と国立競技場を未来に手渡す会
 3-3.新建築家技術者集団・東京支部
 3-4.2020東京オリンピック・パラリンピックを考える都民の会
 3-5.日本野鳥の会
 3-6.日本美学会
 3-7.その他

 〔参考資料〕
 <新国立競技場をめぐる動き>
 2011年12月22日 「2020年の東京」計画策定。「四大スポーツクラスターの整備」を発表。
 2012年3月6日 「国立競技場将来構想有識者会議」発足。日本スポーツ振興センターが設
          置。委員長には元文部事務次官佐藤禎一氏,石原慎太郎前都知事,建築家は
          安藤忠雄氏のみ。
 2012年7月20日 新国立競技場基本構想国際デザイン競技募集要項交付
 2012年11月16日 最優秀賞案の発表と講評
 2013年4月 基本設計開始
 2013年5月7日 第201回東京都都市計画審議会(神宮外苑地区,地区計画決定)
 2013年8月15日 『JIA MAGAZINE』に槇文彦エッセイ発表。のちに,シンポジウムのテーマと
           なる。
 2013年9月7日 東京にオリンピック招致決定
 2013年10月11日 シンポジウム「新国立競技場案を神宮外苑の歴史的文脈の中で考える」
          開催
 

 
 4.「8㎞圏内」での東京五輪開催案。と「五輪2020アジェンダ」
 東京五輪2020は「8㎞圏内」で開催するコンパクトな大会,これが招致運動の目玉のひとつでした。IOC総会ではこの案が多くの支持をえました。しかし,この「8㎞圏内」という発想には恐るべき陰謀が隠されていました。東京都の保有する東京湾埋め立て地(買い手がつかず空き地になっていた)を活用した東京副都心再開発案です。それを東京五輪を契機にして一気に解消しようと時の知事石原慎太郎は考えていました。それが「8㎞圏内」五輪開催の主たる狙いでした。ですから,東京五輪1964で大活躍した駒沢運動公園にあるスポーツ施設は使えないとして,それらに代わるスポーツ施設を埋め立て地に建造しようと計画しました。ここにはとんでもない利権問題が隠されていました。詳しくは当日。

 5.「五輪2020アジェンダ」の発表とその余波

 6.フクシマによる放射能汚染問題

 7.2050年には粗大ゴミに?

 8.おわりに──「東京五輪2020」はだれのためのものなのか。

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