2015年2月3日火曜日

白鵬の謝罪はないのか。稀勢の里戦は白鵬の完敗。ビデオ分析だけなら。

 日本相撲協会は親方に厳重注意をしただけで,ことを片づけようとしています。問題の白鵬は知らぬ・存ぜぬのほおかぶり。わずかに,テレビ出演したその番組のなかで視聴者に向かって「お詫び」をしただけ。それで済ませられる世界ではありません。この問題は,よほどきちんとけじめをつけておかないと,尾をひくことになりそうです。

 たとえば,ビデオ判定。唯一,ビデオ判定がもっとも正しいとするのであれば,問題の一番(稀勢の里戦)は白鵬の完敗です。いまも,YouTubeで確認することができますので,ぜひ,ご覧になってみてください。ストップ・モーションにして,問題の部分を追ってみてください。白鵬の完敗であることがよくわかります。

 相撲の流れは,これは間違いなく白鵬です。ですから,行司は白鵬に,迷うことなくサッと挙げられました。しかし,わたしの眼には稀勢の里の小手投げが優位とみえました。微妙なところですが,稀勢の里の体が割れたようにみえたからです。しかし,物言いがついた段階で,同体・取り直しが穏当なところだろうなぁ,と考えていました。そして,そのとおりの判定がくだされました。これで正解だったとわたしは納得でした。

 しかし,白鵬はからだを預けながら,右手で稀勢の里の左足を払い,小手に振られた左腕で稀勢の里を押し倒し,自分の眼の前で,一瞬,稀勢の里の体が土俵につくのが確認できたのだろうとおもいます。その段階で,かれは勝ちを確信したのでしょう。

 ところが,問題はそんなところにはなかったのです。ビデオ判定を担当した元・寺尾の記者に対する説明によれば,「白鵬の右足の甲が土俵につくのと稀勢の里の体が宙に浮くのとがほとんど同時とみて同体とみて,取り直しとした」というきわめて明解なものでした。

 にもかかわらず,白鵬はみずからの眼でビデオを確認した上で「子どもでもわかる。ビデオをもっとしっかりみてもらわなくては困る。こっちは命をかけているのだから」と審判部の判定に苦言を呈しました。そうか,白鵬はビデオ判定を信じているのだ,とわかりました。ならば,そのビデオ判定に持ち込まれた映像を,わたしの眼で確認してみようと思い立ち,徹底的に分析してみました。

 ストップ・モーションにして,一刻,一刻とからだが倒れていく瞬間を見極めてみました。すると,稀勢の里が小手投げを打った瞬間,白鵬のからだは完全に伸びきり,よくみますと右足の指が裏返っています。そして,さらによくよく観察してみますと,右足の指の爪が土俵についています。このとき,稀勢の里の両足はまだ土俵に残っています。両者の体勢は,稀勢の里は両足で立っており,その稀勢の里の左足に白鵬の右手がかかっています。このあと,白鵬は稀勢の里の左足を右手で払いながら小手を巻かれた左腕で稀勢の里の体を押し倒していきます。このあとの体勢をみますと,稀勢の里が重心を失って,ストンと落ちるように倒れていきます。ですから,ここからさきの体の落ち方からすると,白鵬は自分の勝ちを確信したでしょう。しかし,勝負はその前についていたのです。ビデオ判定が唯一絶対に正しいとするのであれば・・・・。

 元・寺尾は,このあたりのことを十分に見届け,承知した上で,相撲の流れとビデオの両方を総合的に判断して,「同体・取り直し」と判定したのだとわたしは理解しています。この判定にわたしはなんの文句もありません。これでいいのだ,と。

 ところが「勝ち」にこだわった白鵬は,起死回生の自分の放った「わたし込み」と稀勢の里の体が土俵に落ちる瞬間を見極めて,みずからの「勝ち」と判断していたようです。しかし,勝負はその前についていたのです。そこを見過ごしている白鵬のビデオの見方は甘いというほかはありません。

 白鵬が尊敬しているという双葉山が,行司さし違えで,勝っていた相撲を負けと判定されたことがありました。周囲からも,完全に双葉山が勝っていた,という声があがったときに,「そういうあいまいな相撲をとる横綱が悪い」とみずからを戒めたという有名な話があります。白鵬はこの逸話を知らなかったのでしょうか。横綱というものはそういうものなのです。

 もう一点。最悪なのは,相撲協会に出向いて「謝罪」をしていない,ということです。親方だけが呼び出されて,「指導責任」を注意され,親方は部屋に帰ってから白鵬に伝えた上で「本人も反省している」と語っただけです。本人の口からはなにも聞こえてきません。ただ,テレビ出演したときに,お義理のようにひとこと「お詫びします」と言っただけです。それは単なるご挨拶。謝罪とは,みずから異議を唱えた勝負審判部に,そして,日本相撲協会理事長に,さらには横綱審議委員会に対して,直接,お詫びをすることです。

 日本相撲協会としては,後味の悪い終わり方になっているはずです。その証拠に,横綱審議委員会でも話題になっており,委員のひとりは「きちんと謝罪をすべきだ」という談話を出しています。そのほかには「奇怪しい」とおもっている親方衆は少なくないとおもいます。なぜなら,白鵬が自分が所属する親方とは,ほとんどまともな会話は成立しない状態がすでに長くつづいている,という話はよく知られているとおりです。

 白鵬は前人未踏の「33回優勝」という記録をつくり,角界のトップに立ったと勘違いしているのではないでしょうか。横綱の偉大さは優勝回数だけではありません。むしろ,これからの立ち居振る舞いや言動によって定まってくるものです。土俵上の,賞金を受けとった直後のあの所作もいただけません。どうも,この人には「勝つ」ことだけが価値があって,その他のことはどうでもいいという考えがあるようにみえて仕方ありません。

 だれか,しっかりした谷町がきちんと説諭する必要がありそうです。

〔追補〕
 2月1日(日)に行われたちびっこ相撲世界選手権大会「白鵬杯」での,白鵬の記者会見は「問題発言」については質問をしないという前提で行われたといいます。やはり,白鵬は謝罪する意思はない,ということのようです。困ったものです。折角の大横綱なのに・・・・。

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