2015年2月9日月曜日

わが「抗ガン剤治療」白書。その1.からだの発する悲鳴。

 抗ガン剤治療による副作用が,わたしの自己診断によればことのほか大きくでてきましたので,抗ガン剤治療を辞することにしました。しかし,主治医の診断では,ごく,ふつうの経過で,とくに取り立てて異常は見られない,というものでした。でも,よくお話をして,最終的にQOL(Quality of Life)を選びたいとお願いしました。主治医もすぐにわたしの考えを理解してくださり,それでは・・・ということになりました。

 抗ガン剤というものに対するわたしの認識が甘かった,といえばそれまでですが,これは思いの外,強烈なものでした。しかも,累積してからだに残り,その威力を発揮しながら,徐々に徐々にからだの仕組みを根っこから崩しにかかってきます。加えて,一度,取り込んだ抗ガン剤はしっかりとからだのなかに居つき,なかなか抜けていかない,そういう代物だということもよくわかりました。抗ガン剤をやめてからすでに4カ月を経過していますが,その副作用とおぼしき症状はまだしっかりと残っています。ただ,ほんとうに徐々にですが,軽くなってきていることは事実で,それだけが希望の星です。

 抗ガン剤治療の真っ最中には,ほとんど気づかなかったのですが,徐々に回復のきざしがみえはじめたころから,副作用の大きさがみえてきました。少しオーバーな言い方をすれば,地獄からの脱出,それものろのろと,という印象です。ここはじっと耐えながら,副作用が軽減されていくプロセスとじっくり付き合うことにしようとおもいます。

 では,わたしの場合の副作用とはどのようなものであったのか,振り返ってみたいとおもいます。まずは,からだやこころに現れた抗ガン剤の副作用と思しき症状を,思い出せるところから順に,箇条書きにしてみましょう。
 1.味覚の鈍麻・・・味のない世界。ごはんが砂を噛むような不快感。これは参りました。いまは,かなり改善されてきました。
 2.胃腸の麻痺と機能低下・・・満腹感の消滅,消化・吸収の不安定。すぐに下痢をする。最近になって空腹感が少しもどってきました。でも,食べ方は要注意。
 3.食欲の減退・・・時間がきても食べたいとはおもわない。食べないと体重が落ちるので必死で食べる。ただし,分食。食べる量が少なくても平気でいられる。食の鈍麻。
 4.食後,脳の中心が熱くなる。軽い痛みを伴って。なんとなく不安になる。
 5.そのあと,強烈な眠気が襲う。さっさと眠ることに。
 6.顔のしみの色が黒く,大きくなる。なんとも見すぼらしい顔になる。一気に老人の顔に。
 7.額の皮膚が黒ずんできて,かゆくなる。典型的な副作用の一つ。
 8.頭の頂上が禿げてくる。脱毛がはじまった,と覚悟をしましたが,いまは止まっている。
 9.左目の視力が低下。老眼もすすむ。老眼鏡と遠近両用眼鏡を調整してもらって作成。
10.手の指,足の指が黒ずんでくる。
11.手のひらが赤みを帯び,油が浮いたようにテカテカと光る。
12.爪が薄く,柔らかくなる。
13.指先の表皮が薄くなる。湯飲み茶碗が熱くてもてなくなり,気づく。
14.手足の指先が,すぐに冷たくなる。血行不順か。
15.足の指,ふくらはぎ,が眠っているときに痙攣を起こす。
16.頻尿・・・昼はふつう。夜明けがたになって立て続けにトイレに通う。これが不思議。
17.12月後半から1月の前半にかけて,歯がボロボロになる。折れた歯が3本。治療してブリッジをかけていた歯が外れる。根っこから抜けた歯が1本。歯医者に通院中。
18.足首周辺にむくみ。こちらは抗ガン剤をやめてしばらくしたら消えました。
19.胸椎に鈍痛・・・痛いというほどではないけれども,違和感がぬぐえない。どことなく気になる程度の鈍痛がある。最近,少しずつ軽減されつつある。
20.肩こり・・・肩こりをしない体質だったのに,抗ガン剤をはじめてから肩こりが出現。いまも対策を検討中。肩・首まわりの体操が効果的。
21.採血後の注射針の跡が痒くなる。古傷まで痒くなる。周期的にやってくる。いまは,かなり軽減され,それほどではなくなってきている。
22.気力の減退・・・なにもしたくないという状態がつづく。でも,最近になって急速に回復傾向。
23.集中力の減退・・・気持が分散していて一点に集中できない。これも回復傾向に。
24.持続力の減退・・・好きな本を読み始めても長くつづかない。最近は読めるように。
25.なにかと消極的・・・前に出ようとしない。おとなしく部屋に閉じこもりがちに。
26.電話恐怖症・・・電話が鳴るとビクッとする。出たくない症候群。これは以前からある傾向ですが,さらにひどくなる。最近,やや回復。
27.わがままになる。我慢がきかない。すぐに腹を立てる。テレビに向かっても吼える回数が増えてきている。こちらはいまも回復しない。
28.対面恐怖症・・・人と会いたくない。とくに初対面の人が苦手に。
29.仕事をあとまわしにする。たとえば,振り込みなど。どうせやらなければならないのだから,すぐにやっておけばいいのに,それをあとまわしにしてしまう。そして,早くしなければと気をもむ。無駄な気遣い。
30.手紙の返信が書けない。メールはすぐに返信ができるのに。しばらく前からあった傾向が顕著になっただけかも。あるいは,単なる老化現象か。 

 こうして列挙してみますと,ずいぶんあるものだなぁ,とわれながら驚いています。こんなにあった/あるのか,と。でもいまは,全体的にかなり軽減され,改善されてきていますのでご安心ください。それでもなおこれらの症状を引きずっていることは間違いありません。

 もちろん,外にでて人と逢うときには気づかれないように気を張って誤魔化しています。ですから,みなさん,そろって驚いたように「元気ですねぇ」と仰います。で,わたしも「元気ですよぉ」とできるだけ大きな声で応答します。ですから,ほとんどの人は不思議そうな顔をして,わたしの方を眺めています。ですから,なおのこと元気を装います。

 正直に告白しておけば,体調のいい日とあまりよくない日とあります。それを繰り返しながら少しずつではありますが,体調のいい日が多くなってきています。最近は,食事のとり方も上手になってきましたので,かなり快適に過ごせる日が多くなってきました。

 というようなことで,これから少しずつ「抗ガン剤治療白書」なるものを書きつらねてみようかな,と考えています。今回は「その1.からだの声の記録」ということで,いわば「総論」です。これからは各論に入ります。つまり,抗ガン剤治療というものがどういうものだったのか,患者の目線から分析してみようという次第です。

 ということで今回はここまで。

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