2015年9月26日土曜日

なぜ,森喜朗会長の責任は問われないのか。新国立競技場・第三者委員会報告。

 腰砕けの第三者委員会の報告。これが,わたしの第一印象でした。

 問われるべきは,森喜朗組織委員会会長である,とにらんでいたからです。新国立競技場をめぐる一連の不祥事の背景には,いつも森会長の陰がちらついていました。この恐るべきドンの存在は格別で,文部科学大臣といえども,ましてやJSC(日本スポーツ振興センター)理事長などにいたっては,平身低頭,言われるがままだったのではないか。

 もちろん,組織のトップである文部科学大臣と,それに連なるJSC理事長に責任があることは,だれの眼にも明白でした。ですから,この二人の責任を明確に指摘したという点では,第三者委員会(正式には,新国立整備計画経緯検証委員会)を評価したいとおもいます。しかし,この二人とも,手も足も出せない存在であり,その発言力が莫大であった森喜朗会長の責任が問われなかった,というのはどう考えてみても納得がいきません。

 「新国立・検証報告書要旨」なる記事が,9月25日の東京新聞に掲載されていましたので,それらをしっかりとチェックしてみました。いくつかの問題点が指摘されていますが,なかでも,つぎの文言がわたしの関心事を裏づけてくれていました。すなわち,有識者会議(正式には,国立競技場将来構想有識者会議)の存在です。

 「有識者会議はJSC理事長の諮問機関の位置付けにもかかわらず,メンバーが重鎮ぞろいで,実質的に重要事項の承認機関となっていた。JSCの意思決定を遅らせる要因の一つになっていた」。

 重要なことは,すべてこの有識者会議で決めていた,と第三者委員会は判断しているのです。にもかかわらず,この有識者会議のメンバーの「聞き取り」調査は行っていないのです。つまり,第三者委員会といえども,有識者会議に手を出すことはできなかった,ということです。この有識者会議のメンバーは全部で14名。各界のトップが顔を揃えています。それでも政治的発言力からいっても群を抜いており,その中心的な役割をはたしたのが,森喜朗会長です。

 詳しいことは省略しますが,これまでの経緯をみていても,ポイント,ポイントには森喜朗会長の名が登場し,その影響力の大きさはだれの眼にも明らかでした。有名なところでは,ラグビーのワールド・カップを開催する会場にせよ,とごねたこともありました。

 それはともかくとして,第三者委員会のメンバーは6名。委員長は東大名誉教授(柏木昇),そして,公認会計士,弁護士,アスリート,京大教授,それに経済同友会専務理事(横尾敬介)が加わっています。これは,どうみても森喜朗会長と横尾経済同友会専務理事との連携プレーがあったな,とおもわざるをえません。

 有識者会議のメンバーの聞き取り調査をしなかった理由を問われた柏木委員長はつぎのように答えています。
 1.第三者委員会のメンバーのなかから,有識者会議のメンバーの聞き取り調査をせよ,という声はあがらなかった。
 2.もし,それをやるとしたら,時間も金も膨大なものになってしまう。
 3.期限を切られた短期間では不可能だった。

 これらをみれば,最初から,第三者委員会の検証には限界があって,しかも,その筋書きもできあがっていた,とおもわざるを得ません。要するに,身内同士の馴れ合いのお手打ち式だった,ということです。ですから,文部科学大臣とJSC理事長という組織のトップの責任を指摘するにとどめ,諸悪の根源には蓋をしたまま閉じてしまった,という次第です。このシナリオもまた,森喜朗会長の指示どおりだったのではないか,とわたしなどは勘繰ってしまいます。

 なお,東京新聞は,第三者委員会の検証について,28日朝刊に特集紙面を掲載する,と予告していますので,それを読んで,さらに考えてみたいとおもいます。

 というところで,今日はここまで。

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