2015年11月29日日曜日

伏魔殿・日本相撲協会の「浄化」は可能か。八角親方に期待。

 北の湖理事長が急逝した。九州場所の13日目。11月20日。62歳。直腸癌が全身に転移し,多臓器不全。胴長短足のアンコ型の,重心の低い力士で,スピードもあって,強かった。勝っても負けても鬼のような顔は変わらず,「憎らしいほど強い」と話題になった。みていて,どうして勝てるのかわからないような勝ち方も多く,不思議な力士だった。どうやら,重心の低さが最大の武器だったのだろう。

 没後のメディアの評価は生前と比べて総じて高い。まあ,お悔やみ代といったところか。しかし,実際のところはどうなのだろうか,とわたしには疑念が残る。一段落したところで,これからいろいろの論評がでてくるとおもわれる。まずは,その行方を楽しみにしたいとおもう。

 やや性急かもしれないが,現段階で,わたしの感想を言っておけば,以下のとおりである。
 表と裏を使い分けて協会運営を切り盛りした,という印象が強く,けしていい評価は与えられない。なぜなら,伏魔殿と言われる日本相撲協会をますます伏魔殿にしてしまい,見えない陰の力をはびこらせてしまったのではないか,と訝られるからだ。

 その最たるものは,協会の理事選挙。年が明けた1月には,次期理事の選挙が行われる。もう,すでに,激烈な票のぶんどり合戦がはじまっているという。北の湖理事長の没後,すぐに,その動きがはじまったという。先頭を走っているのが九重親方。前回の理事選挙で,九重親方は,こともあろうに落選している。当選確実とみられていたのに,蓋を開けてみたら,身内の票が削り取られて,当て馬候補に流れていた。それを画策した人物がいたのだ。

 その人物こそ,裏金・顧問と呼ばれる陰の実力者で,しかも,北の湖理事長の「右腕」として辣腕をふるっていた,という。しかし,理事長亡きあとの裏金・顧問はどのように動くのか。こちらも,すでに,動きはじめているという。

 なにせ,伏魔殿の中でのことゆえ,漏れ伝わってくる情報もあまり当てにはならない。しかし,火のないところに煙は立たないともいう。なにがしかの事実がその裏には隠されていると言っていいだろう。そこからの推測によれば,以下のようになるようだ。

 九重親方理事落選の裏舞台はこういうことだ,という。裏金・顧問が日本相撲協会とパチンコ・メーカーとの契約を結び(全力士の肖像権契約。しかも,これは理事会の議決を経ていなかったという),そのとき「裏金・500万円」が二度にわたって手わたされた。その現場を撮影した動画がネット上に流れた。これは事実。このことを知った九重親方は北の湖理事長に,大急ぎで知らせ,善後策をとるべきだ,と迫った。つまり,裏金・顧問はもとより,理事長としてもなにがしかの責任をとるべきだ,と。しかし,どこでどうなったかは不明だが,結果的には,この動画を撮ってネット上に流したのは九重親方に違いない,ということになり,理事長側は顧問も含めて結束を固めた。そうして,九重親方を理事から追い落とす作戦にでた。そして,それがまんまと成功した,というわけだ。

 もし,九重親方に作為がなかったとすれば,これは怨み骨髄ということになる。だから,こんどの理事選挙こそ正当に勝ち取って(票は十分にある),この裏金・顧問の追い落としにかかる,そのための万全の体勢を整えつつある,という。そんなことになっては一大事の裏金・顧問は,すでに数年前から貴乃花親方にすり寄り,再度,九重親方落選に向けて根回しをはじめた,というのである。

 となると,こんどは貴乃花親方の力量が,ここで問われることになる。貴乃花親方が理事長をめざしていることは間違いないが,このタイミングで立候補するかどうか,問題だ。なぜなら,時期尚早というのが,一般的な見方だから。

 もう一つ,超えなければならないハードルがある。いま,北の湖理事長急逝にともない,急遽,理事長代行をつとめることになった八角親方(事業部長・協会のナンバー2)の評判がことのほかいいからだ。バランス感覚に優れ,協会全体のあり方を視野に入れ,是々非々の立場を貫いているという。そして,マスコミの受けもいい,という。もっとも貴乃花親方を支持する若手の親方も少なくないと聞いている。が,現段階での,八角親方に勝てるだけの数にはまだ足りないだろう,という。だとすれば,八角親方のあとを狙うのが順当なところだ。

 しかし,八角親方は,急場のこととて,理事長代行は引き受けたものの,かれ自身はこの段階で理事長になろうという野望はいだいていない,とわたしは推測している。なぜなら,八角親方(元・北勝海)は九重親方(元・千代の富士)の弟弟子に当たるから,兄弟子を差し置いて・・・とは,かれの性格からして許さないだろうとおもう。だとすると,どうなるのか。

 そこを狙って貴乃花親方を担ぎだそうというのが,裏金・顧問だ。いずれにしても,九重親方が理事に復活すれば,情勢は一気に変わってくるだろう。なんと言っても協会を背負うに十分な名横綱としての実績がある。その九重親方の存在を,八角親方が無視するとは,とても考えられない。

 いずれにしても,裏金・顧問が,これからも暗躍するような協会であってはならない。そのための「浄化」は不可欠だ。とはいえ,伏魔殿のこと,なにが起こることやら,だれも見通せないのがミソだ。でも,こういう情況だからこそ,八角親方が大勢の親方衆に押されて,理事長に就任し,協会「浄化」のために尽力してほしい,というのが正論だ。

 あの,立ち合いから迷わず相手の胸に頭からぶち当たって一直線に押し出す,北勝海の相撲のように。その意味で,八角親方には大いに期待したい。

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